<キングメーカーが決断、いよいよ立つ>
蔵内勇夫県会議員が心許しているゼネコンの経営者は「絶対に知事選にはでませんよ。冷静に考えてみてください。現在の居心地の良いポストに座っていたほうが、大きな仕事ができますよ!!御本人も立候補するつもりはないと公言しています」と断言した。これは昨年末のことだ。親密な関係にある周囲の方々にも蔵内氏は自分の本心を慎重に徹底的に隠してきた。この行動パターンは過去のキングメーカーとして歴戦練磨の経験に由来している。「情報が漏れたら戦いは負ける」という勝利の鉄則を学んできたからだ。
「麻生知事の次の知事選への野望を断ち切らせた功労者の一人が蔵内先生であったこと」は関係者の周知なことだ。だから筑後市地元では「蔵内県議が知事選への向けた用意周到な仕掛けの一弾」と囁かれていた。だがこの説には筆者は異論を挟む。今回の知事選の自民党推薦者選定を巡っては当初、同氏は選任者の立場をとるつもりでいた。気心知れている麻生代議士から「蔵内君!!小川でいきたい。頼むよ」という一言があれば、今回もキングメーカーに徹していたはずだ。
ところが殿さま・麻生代議士は「自分が小川を推せば蔵内も他の県会議員も同調する」と錯覚していた節がある。だから独走して反発を買った。殿さまという甘さの性根が災いしたこともあろうが、側近が悪い。東京在住の麻生代議士に的確な情報を提供する人材がいなかった。いたのは麻生先生の虎の威を借りて踏ん反りかえる奴等だけだ。『福岡市長選挙の勝利は麻生先生のおかげだ』とはしゃげば、麻生陣営外のメンバーは面白くない。「福岡市の利権だけでなく県まで麻生に好きにさせて溜まるものか」という怨念が凝縮される。
政治の世界では嫉妬が一番怖い。昨日までの味方が今日は敵になる。自民党福岡県連内では県会議員達は国会議員達を舐めている嫌いがある。「蔵ちゃん!!こうなればあんたが立て!!」と、麻生派と目されていたような県会議員までが御輿(みこし)を担ぐ動きが強まった。「福岡県南部からぜひ、県知事を誕生させよう」と執念に燃えている古賀誠代議士の後押しもある。「いよいよ勝負の時期が来た」と蔵内先生は読み決断した。
<自民陣営激突・分裂選挙の様相か>
現在の情勢では自民党県連での福岡県知事推薦の投票が行なわれれば、蔵内氏に軍配が上がるようだ。それも圧倒的な差である。この大勝負の局面で蔵内先生に体を張って恩返しをしようとする連中は数多くいる。30日までには自民党福岡県連は「蔵内推薦」を決定することは間違いない。そうなると麻生ボンボン代議士はどういう手を打ってくるのか。「玉は小川の方が断然良い。知事選では蔵内には負けないという情勢分析をする可能性が高い」と指摘する情報通もいる。そうなれば、自民党陣営内の分裂選挙になってしまう。
どこかで最終的な落とし所はあるだろうが、気配りで鳴らしてきた蔵内氏の頭にはさすが、「今回の勝負で自らが下りる」という選択は毛頭ない。主戦論で走る。ところで、情けないのは政権与党の民主党だ。ここに至ってまだ立候補者を決められないでいる。「負け戦ならば古賀一成先生でどうか」という水面下の動きもある。
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