田村建材（株） 代表取締役社長 田村 伊幸
＜不動産や環境分野など事業拡大＞
山口県長門市に本社を置く「田村建材株式会社」は、創業131年。1879年（明治12年）に食品販売から始まり金物、建材、そして建設業へと着実に成長を続けてきた。15年前には「環境部門」を設け、廃棄物の選別から破砕、圧縮までを行なうリサイクルステーションを整備。また従来、埋め立てもしくは焼却処理していた木くずを石炭の代替燃料などとして再生する「TAMURA木くずリサイクル施設（山口県認定リサイクル製品）」や、破砕・焼却施設、安定型最終処分場までそろえ、産業廃棄物の一貫処理システムを実現させた。さらに2008年に「不動産部門」を立ち上げ、中古住宅の再生を柱にした「リフォーム部門」や「足場部門」「太陽光発電部門」とともに、時代のニーズに合わせた事業開拓に力を注いでいる。
なぜここまで多岐にわたる事業拡大を行なっているのか。代表取締役社長の田村伊幸氏は「建設業界で、かつて中心にあった建材業者のポジションを復活させたい」と話す。「昔は材木屋さんといえば地域の有力者的な存在でした。家を建てる大事な柱を提供するわけですから。しかし今は、ハウスメーカーなどの大手企業から受注する弱い立場。これは林業を含めた地場企業の体力低下につながり、長い目で見れば、消費者にとっても決して良いことではありません。同じような関連企業を活性化させるためにも、まず弊社自体が建材会社という立場に甘んじないよう、地域の建築関連のさまざまな情報を把握・提供できる環境を整え、第三者的な立場で、消費者と建設業界をつなげる橋渡し役を目指したいのです」。田村社長は、業界全体のことも視野に入れている。
＜新卒採用によって業績もアップ＞
田村グループの新規事業展開の舞台裏では、５年前から始めた"新卒採用"も大きな影響を与えているという。
そもそも新卒採用は、就職説明会や面接、内定後のフォローまでと費用・時間・人手が非常にかかる。即戦力を求めて中途採用に偏るのも無理はない。だが田村社長は「新しい仕事をするなら人も新しく、若い人を採用してみよう」と新卒採用の導入に踏み切った。実父である会長の反対を押し切っての英断だった。
就職説明会は福岡市で行ない、予想をはるかに上回る優秀な学生が集まった。そして社員と共に何度も面接を重ねた田村社長は、思わぬ副産物に気付いた。「面接で私が話した会社への思いや理念が、同席した社員たちにも伝わり、改めて目標が共有され、モチベーションアップにもつながったのです」。新卒組は、新規の不動産や環境部門などに配属され、「筋道がないゆえの、がむしゃらな挑戦」が功を奏し、事実、売り上げ増につながった。他の社員らも刺激を受けて覚醒し、社内での相乗効果を生んだ。会長に「新卒採用をもう１年早めるべきだった」と言わしめるほどの成果を上げた。以来、新卒採用を続けている。
田村社長は言う。「この不況時こそ、中小企業は新卒の人材育成に投資をしてもいいと思います。福岡にはたくさんの優秀な学生がいます。白紙の状態から会社理念を理解してもらいつつ、既存の形にこだわらない新しいビジネスモデルを開拓できる可能性もあります。長期的に見れば、それが地域経済の活性化にもつながっていくのではないでしょうか」。
＜プロフィール＞
田村 伊幸（たむら よしゆき）
1969年生まれ。92年、法政大学経営学部卒、「（株）船井総合研究所」入社。95年、「田村建材（株）」入社。
＜会社概要＞
田村建材（株）
代表者：田村 伊幸
所在地：山口県長門市東深川653-2
設 立：1972年１月
資本金：5,830万円
ＴＥＬ：0837-22-2036
ＵＲＬ：http://www.tamura-kenzai.co.jp/
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