「市長が変わっただけで、こんなにも態度が変わるなんて...」。『秀望のツツジ』の護り人のひとりであり、同木周辺の"無断占有"で市側から訴えられた被告・福岡すみ子氏は困惑の表情で語った。
福岡氏は1枚の「行政使用許可書」を見せてくれた。前市長・福永浩介氏が2006年4月1日から07年3月31日まで、修験者の鎮魂を目的とする建立物用地として2.37㎡の土地の使用許可を与えたものである。
最初は、同地に御堂を建立した03年に、福永前市長の配慮で許可書が与えられるようになったという。その年には、御堂だけでなく、『秀望のツツジ』までの遊歩道の舗装も行なわれた。もちろん、ボランティアによってである。同許可書は、これまでの護り人たちと人吉市の関係を示す証のひとつと言ってよいだろう。
同許可書は1年ごとに更新され、田中市長になってから09年3月31日まで許可が与えられていた。許可書の条件には、「使用期間を更新しようとするときは、使用期間満了10日前までに書面をもって申請しなければならない」とある。ただし、福永前市長時代は、行政側の配慮がなされ、ほとんど自動更新に近かったと福岡氏は回顧する。現在は、市有地の"無断占有"と見なされるはずの御堂だが、不思議なことに今回の撤去指示の対象外となっている。
今回の人吉市からの樹木・龍神の御堂に対する撤去指示について、「何を目的としたものかが理解できない」と、福岡氏は心痛な面持ちで語った。護り人たちが植えた樹木には、撤去命令の対象外にされたものもある。『秀望のツツジ』周辺の紫陽花などだ。むしろ、引き抜かねばならない南天の木のほうが小さい。さらに、その周辺には自生した植物もたくさんある。護り人たちは通行の妨げにならないよう、また『秀望のツツジ』に土中の養分がいくようにと、草を刈るなどして整備してきたのである。
客観的に見れば、市有地へ勝手に木を植えた行為が無断占有とされること自体は文句のつけようがないが、行政(人吉市)が目くじらを立て、裁判まで起こすほどの必要があるのだろうか。少なくとも問題とされる植樹行為は、護り人たちの好意こそあれ、悪意は微塵も感じられない。また、通行料や見物料をとっているわけでもなく、私利私欲のためにやっているわけではないことは疑いようがない。
今回の判決に対し、護り人たちの無償奉仕活動を知る地元の人々からは、「ただの嫌がらせにしか思えない」と、悲嘆する声があがっている。
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