（株）ツキジ 代表取締役社長 築地 隆仁
＜技術にこだわり着実に信頼を築く＞
厳しい環境下にある建設業界では数少ない物件に多くのゼネコンが殺到し、激しい価格競争が繰り広げられている。そのしわ寄せは下請け、孫請けなどの現場に近いところほど大きく、倒産・廃業が相次ぎ、生き残っても赤字受注は常態化し現場で働く人たちの給与も削られているのが現状だ。
そのようななか、防水工事を中心にシーリング、塗装吹付、建物のリニューアルなどを手掛ける「株式会社ツキジ」は、堅実な業績を挙げ続けている。築地隆仁・代表取締役社長は、その業績の背景を次のように説明する。
「私たち建設業界にとって、一番大事なことは、いいものをつくることです。子どもたちに『この建物はお父さんがつくったんだよ』と堂々と言える、誇れる仕事をすることです。そのためには、現場で実際に働く職人さん一人ひとりが高い技術を持ち、やりがいを持って仕事ができるような現場でなければなりません。安い金額で受注して資材を削り職人さんたちの給料も減らしてしまっては、とてもいい仕事はできません。場合によっては手抜き工事で後々重大な事故を招くことにもなりかねません。そうならないように、職人さんたちがプライドを持って仕事に取り組めるような環境をつくるのが、私たち経営者の仕事だと思います。私どもでは赤字受注はしませんが、もし万が一そうなったとしても、請けた以上は仕事を完ぺきに仕上げます。それが職人のプライドです」。
築地社長は、この確固たるポリシーを貫くことで着実に信頼を築き、この不況下にあっても安定した受注を確保している。経営的にも長期の借入をせず、常に資金に余裕を持たせることで経営の安定を図っている。
＜経営者がものづくりの原点を忘れないこと＞
築地社長がこのポリシーを貫ける背景には、本人が職人として技術を身に付けており、仕事の段取りから職人気質まで現場のすべてを把握していることがある。
「品質や技術面では、私は厳しく現場を管理しています。きついことを言い、ときにはやり直させることもありますが、職人というのはそうやって技術を身に付け、できたときの喜びを知り、そして自分の仕事に誇りを持てるようになるのです。しかし管理する側が数字ばかりを重視して現場をおろそかにすると、職人というのは一気にやる気を失います。そうなるとせっかくの技術が次の世代に伝わることなく、そこで途切れてしまうのです。日本には長年積み上げてきた職人気質と常に向上し続ける最先端の建設技術があります。それが失われていくことが一番心配です」（築地社長）。
では、そうならないためにはどうすればいいのだろうか。築地社長は次のように語る。
「私たち経営者やゼネコンの管理者など、直接現場で働かない人たちが、ものづくりの原点を忘れないことが重要だと思います。いまこそ、技術と品質、そして職人の誇りを大事にするときではないでしょうか。厳しい業界環境のなかでも、私のポリシーを理解して、信頼して、私どもに仕事を任せていただけるゼネコンの方がいらっしゃいます。私はそうした人たちとの絆を大切にして、一緒にいい仕事を重ねていきたいと思います」。
厳しい環境下にあるからこそ、本質が求められる。築地社長は身をもって提言していると言える。
＜プロフィール＞
築地 隆仁（つきじ たかひと）
1961年４月生まれ。学卒後、医療器具メーカーの営業職を経て建設業界へ。87年、「築地シーリング工業」を創業し、91年に法人化。97年から現在の商号となる。
＜会社概要＞
（株）ツキジ
代表者：築地 隆仁
所在地：福岡市南区屋形原3-38-12
設 立：1988年６月（創業）
資本金：2,000万円
ＴＥＬ：092-565-1366
ＵＲＬ：http://www.ts-tsukiji.com
※本稿は以下の書籍に掲載されています。
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