2月6日に投開票が行なわれる名古屋市長選挙では、同日に投票が行なわれる名古屋市議会解散の是非を問う住民投票も争点になっている。市議会が解散になった場合、選挙は3月13日に行なわれる見通しとなり、解散にならない場合でも4月10日に投開票が行なわれる統一地方選で同市議選が行なわれる。そのことから、「わざわざ解散させるまでもない」というのが、反対派の意見だ。
民主党推薦、自民党市議団が支援する前衆議院議員・石田芳弘候補(65)の陣営では、「たった1カ月早まっただけで3億2,000万円の税金が余分にかかる」とのビラを配布。さらに、前市長・河村たかし候補(62)の辞職に伴う市長選の費用3億円弱と合わせて約6億円がかかると指摘する。共産党推薦の元参議院議員・八田広子候補(64)も「市長言いなりの議会づくりに反対」と声をあげる。
一方、住民投票への「賛成」を呼びかける河村氏は「衆議院には民意を問うための解散総選挙がある。その場合の費用は900億円」「解散されたくなかったら、(市民の)支持をうける議会であるべき」と反論する。
3億2,000万円をムダとする主張から、有権者の間では誤った認識も生じている。それは1カ月ズレたことで、今後、毎回の名古屋市議選で3億円余分にかかるようになるというものだ。しかし、統一地方選が実施される直前に『地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律』が制定され、3月1日から5月31日までに任期満了となる首長や地方議員の選挙は日程が統一される。
河村流の議会改革、その肝心要は解散となった場合、議員の入れ替えに成功するか否か、この一点に尽きる。愛知県知事選も含めたトリプル投票の一方で、現職市議たちは地元のあいさつ回りに余念がなく、着々と選挙準備を行なう。対する河村氏率いる地域政党「減税日本」(政治団体)は、24日、新たに7名の公認候補を発表し、合わせて34名の候補を擁立した。さらに、同日、減税日本の政治資金パーティーを開催。500名を超える支持者が参加した会場で候補予定者が顔をそろえた。
しかしながら、その候補予定者たちは、初めて選挙を経験する新人がほとんど。選挙準備においては現職議員に遅れをとるのも致し方ない。現実的に考えて、減税日本が過半数の議席をとるためには、今回のトリプル投票で、河村流の議会改革に対する民意をさらに高めると同時に、その追い風のなかで、それぞれの新人が顔と名前を売って、支持を得ていく必要があるだろう。
4年間の議員活動自体がすでに選挙準備といえる今の地方議員(現職)を相手にするには、「地方議員は地域の代表・口聞き役」といった従来の認識を打ち破る有権者の意識改革が必要だ。阿久根前市長の竹原信一氏は「市民が公(おおやけ)のためを思って投票すれば、どんな人間が首長、議員になっても良い社会になる」と有権者へ強く訴えた。一人ひとりの票が隣近所や職場などのしがらみから脱却しなければならない。そうして投票が行なわれれば、たとえ現職が再選をはたしたとしても、それは"公のために働く人間"であるということだ。
【山下 康太】
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