<今後期待される対中ビジネス形態>
非製造業の本格参入が相次ぎ、製造業の対中投資に一服感が出てきている現在では、また違った課題が生まれはじめている。「戦略的互恵関係」という言葉が使われるようになってからより顕著になったが、ものづくりの代わりにサービス業への投資が拡大していった。中国社会の価値観も多様化してくると、各地で労働争議などが起こるようになった。これからはナショナリズムにどう立ち向かっていくかが大事になってくると思う。
日本の企業は、対中ビジネスの裾野を拡大し、国際的な人材を育成するなどして、ビジネススキルを向上させていかないと、ますます伸びていく中国をキャッチアップしていけなくなると思う。
中国に進出した日系企業は、これまでは東の沿岸地域が多かったが、これからは地方都市にも注目していきたい。今後期待される進出の形態がいくつかある。2008年には、中国の商務部と日本の経済産業省の間で交わした「中小企業の海外事業展開を円滑化させるための覚書」により、日本の中小企業がもっと中国に進出しやすいような基盤も整備している。また大連には、環境関連企業を中心とする日本工業団地「大連日本環境産業テクノパーク」も去年、竣工した。
そこの会長は、元福岡大連未来委員会の事務局長も務めた人で、九州とも縁が深いので、環境面で技術力のある九州の企業にとっては、進出のハードルがぐっと下がるのではないかと思っている。流通業とか不動産業などのサービス産業を中心に誘致を進める企業団地も蘇州に出てきたし、中西部内陸の経済開発区(湖北省、重慶、四川省、安徽省)なども注目すべきエリアとなっている。
【文・構成:杉本 尚大】
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