糸島市内はもとより、週末には福岡市内から多くのお客で賑わう人気精肉店(有)トラヤミートセンターは、福岡市内から日向峠を越えて最初の交差点に位置している。同店を切り盛りする小川邦俊社長は、精肉業界に入ってから54年、独立してから48年のたたき上げの職人である。最近でこそ糸島エリアが脚光を浴びるなかで、繁盛店の経営者だが、今日に至るまでの道のりは苦労の連続だった。
<独立の原点は小学生時代>
小川社長は、1941年長崎県生まれ。アイデアマンで行動派だった邦彦少年は小学生のころ、自宅から6km程離れた山に薪(たきぎ)を採りに行き、週1~2回の割合で市場を売り歩いていた。
「いつも台車に乗せて50束ほど積んで売っており、最初は1束10円で売っていました。そうすると、まとめ買いする人が多く、次に1束20円に上げて販売してもこれまたよく売れました。帰りに、そのお金で回転焼きを腹一杯になる分だけ買って帰るのが楽しみで、この経験こそが現在の原点だったのだと思います」と小川社長は振り返る。
中学卒業後、就職列車で上京中に北九州小倉駅で下車、職業安定所の紹介により遠賀郡芦屋町の精肉会社「肉の大力(だいりき)」に就職した。社長の勧めで食肉用の豚を飼育し、繁殖を行なう技術を身に付けながら食肉を見る目を養った。19歳のときに育ての親が死去したので、独立した姿を見せることはできなかったが、21歳のときに福岡市南区大橋のストア内の肉売場に店を構えた。トラヤミートセンターのスタートである。
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