「地域振興」や「まちづくり」を考えるうえで、ポイントとなるものはいったい何か――。3名の専門家にお集まりいただき、座談会を行なった。
<コミュニティの良さ>
吉田 東京に住んでいたときと今とを比べた場合、コミュニティの状況はいかがですか。職場などではなく、住んでいる周りの状況は。
―正直なところ、東京では本当に個人主義で暮らしていました。地域の人たちとの関わりもあまりありませんし、マンションで隣の人と言葉も交わさないような状況でした。それこそ自分と企業、家族や友人たちといったように、小さいときからあるコミュニティのなかの関わりしかないような状態です。
今、いろいろと糸島のなかで活動していて思うのは、地域の皆さんがまるで家族のように接していただいて、アドバイスをくれたり、土地の良いところを教えてくれたりするなど、「地域のコミュニティの良さ」が感じられるようなつながりがあります。
やはり、「地域のコミュニティの良さを感じていく」――その体験をすることが、地域に対するコミットのベースになっていくのかもしれませんね。
<「イベント」の役割>
佐藤 よく、地域を活性化させる方策の1つとして、「イベント」というものがあります。その「イベント=何かを興す」というときに、イベントそのものが持ついろいろな効果があります。
たとえば、私の事務所でここ10年来携わっています「博多灯明ウォッチング」を例にとってみましょう。
まず、「博多灯明」のイベントを行なうことで、それに興味を持った地域の皆さんが参加することができます。参加された方は一緒にやっていくなかで少しずつ手順を覚えていき、最初は指示されるままに灯明を配置して絵柄を描いていたものが、次に「どのような絵柄を描こうか」と自分で考えるようになっていきます。さらにその次の段階になると、「誰と誰をどういうふうに動かせば、もっとこれだけ大きなものが描ける」というように変わっていくのです。
ですから、イベントには住民の方々がそういう何かを「組織立って動かしていく」ということをやる際の、手順を踏んでいく「レッスン」のような効果もあるのです。
ですから、イベントにはそういったレッスン的な要素も含まれていますし、それを行なうことで次に「リーダー格」になるような人が育ってくるようなことも期待できます。
それともう1つ、イベントの役割としては、これまでのような「対お金」という考え方以外の枠組みで動くことができる部分です。たとえば「100円を払えば、100円分の価値がある何かが返ってくる」――そういったことは、田舎のイベントでは成り立ちません。
「俺も力を出すから、君も力を出せ」「俺も物を出すから、君も物を出せ」といったように、今まで触れてきた経済とは違う交換条件のなかで働くことが要求されるわけです。
ですから、たとえば皆で地域の清掃活動を行なうような場合に、「掃除当番に参加できないから、代わりに500円を払います」などといったことでは、絶対にダメです。やはり、どんなことがあっても「一緒に掃除しましょう」というような姿勢でないと、地域に受け入れてもらえませんし、地域の活性化にもつながりません。
ですから、「これからの社会は、経済じゃないところで動いていきますよ」「そこで、みんなで汗をかきますよ」「そのことに対して、価値を見出しますよ」というような1つの基盤がない限りは、地域におけるイベントの役割は果たせないのです。
【坂田 憲治】
<参加者> | |
NPO法人えふネット福岡 専務理事 蓼原 典明 氏 |
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(株)環境デザイン機構 代表取締役 佐藤 俊郎 氏 |
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(株)地域マーケティング研究所 代表取締役 吉田 潔 氏 |
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