任期満了に伴う筑紫野市長選は、30日の投開票を間近に迎えて各陣営とも追い込みに入り、デットヒートの様相を呈している。そこで各陣営の状況を検証してみる。
<平原陣営>
2期8年の市長としての実績を全面にアピールし、選挙戦を戦う平原四郎陣営は出馬表明時や事務所開きの時のような余裕は感じ取れない。周知の通り、田中允氏が出馬を断念し、代わって前自民党福岡県連会長・藤田陽三氏が立候補したことで、その存在が"大きな壁"として立ちはだかったのだ。
前回の選挙では終始優勢のまま押し切り再選を果たした。そのときの経験からくる油断があったのだろうか、藤田氏の立候補で楽勝ムードは消し飛んだ。「事務所立ち上げ当初の戦略では投票率の上昇も見込んでいたぐらいですから、甘く見ていたところもあります。今ではそんな余裕はありません」と平原陣営関係者はコメントしており、戦略方針も大幅に修正したようだ。
「同市の財政を立ち直したのは平原市長のご尽力」と市民に根強い人気を持っているが、今回の選挙戦は厳しさを増しているようだ。加えて、気になるのは当日の天気である。投開票日となる30日は"くもり時々雪"とあいにくの天気であり、降水確率50%とのこと。天気が荒れ模様だと投票率が下がるのは間違いなく、浮動票の比率が高いと聞かれる平原氏には天気を味方に付けることは出来なかった。
筑紫野市の財政の改善を行うために大鉈を振るった平原四郎氏。その平原氏を支援するために同事務所には支持者がごった返している。しかし、選挙カーを降りてからも平原氏は自ら電話で支持を訴えていた。当選は、基盤を固められるかどうかにかかっている。
<藤田陣営>
藤田陽三陣営は、選挙事務所を「筑紫野イオン」前に構えている。もともとは田中允氏が事務所開きを行なった所であり、市内でも人が集まる有名所。「田中さんの事務所にはもったいない場所」という市民の声が聞かれたが、今ではそれが功を奏したように映る。
藤田陣営の大きなマイナスは選挙戦で出遅れたことだ。昨年10月頃から出馬の話が浮上してきたが、現実となるまでに時間がかかり過ぎた。その遅れを取り戻そうと支持者たちは選挙活動においてかなり積極的に取り組んでいる。「厳しい選挙戦になりそうですね」と関係者は口を揃えつつも、自民党県連会長を辞して市長選に立った藤田氏に支持者が寄せる期待は大きい。
支持基盤を固めつつあるものの、相手は現職。平原氏の財務立て直しの成果は、市民から評価されてきた。しかし、それだけでは筑紫野市の発展は見えないといった意見もある。その意見をくみ取り、福岡政界の大物ながらも挑戦者としての立場で勢いのある選挙戦を展開している。しかしながら、残りの時間はあとわずか―。
<濱武陣営>
濱武陣営は選挙事務所を自宅に構えるため写真取材はないが、日本創新党から推薦をうけるなどして、若年世代からの支持を固めている。告示前にはネット上で積極的なアピールを行なっていた。
平原氏と藤田氏との対決がより鮮明になるなか、両陣営、濱武氏に流れるといわれている浮動票の確保に懸命だ。日本全国の若手議員との連携をとる濱武氏の動向からは目が離せない。福岡市では、高島宗一郎氏が36歳の若さで市長となった。その影響が有権者にもおよび、若手政治家への見方が変わっている向きもある。
きょう(29日)が最後の選挙活動日。市民が新市長に選ぶのは誰なのか。最後に、市民にとって選挙は、自らの投票で市政の行方を選択できる機会。投票には参加すべきである。
【道山】
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