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50億円資産めぐる遺言状真贋裁判―業界、地域名士が渦中に(中)
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2011年1月13日 07:20

 訴状や証拠資料及びT氏の話を聞く限り、最新の遺言とされたものが有効か、確かに疑念を抱かせる。まず2002年に『遺言書』と毛筆らしきもので書かれたそれは、4人それぞれへの遺産配分がきちんと記されている。

 まず土地、建物、家財道具はT氏の姉である長女に、さらに保有するA社の株式の8分の1。長男と次男にはやはりA社株式の8分の1ずつ、および現金と預貯金、A社株以外の有価証券をそれぞれ2分の1ずつ。そしてT氏にはA社株式の8分の5という配分だ。執行者として指定する弁護士の住所、氏名、書いた年月日はもとより、末尾には「兄妹仲良く家系を守り、墓を大切にして」云々という母親らしい気遣いも記され、いかにも遺言書らしい体裁が整っている。

 これに対して、新しい03年8月29日の『遺言状』と記されたそれは、ボールペンらしきもので書かれたわずか1枚。自分の銀行口座に有する普通預金のうちの4億円を4人に1億ずつ相続させる、という素っ気ないもので他は何も言及されていない。

 「そこが問題なんです。02年の正規の遺言にあるように、私は母が所有するA社株の8分の5を相続することになっていました。母はA社株を1万1,760株保有していたので、兄や姉はそれぞれ1,470株、私が7,350株となります。未上場なので客観評価はできませんが、それより数年前に上場話があり、そのときの証券会社その他の1株当たり評価額は27万数千円。そこから推定すれば、相続時は40万円前後と思います。それを03年に遺言を書き直したという同じ日に、わずか5億6,500万円で姉の義弟に売却。それが母の銀行口座に入金され、4人各自が1億円ずつということなんです」(T氏)。

 姉の義弟は役付きでもA社社員。5億数千万円もの大金が払えるはずがない、とT氏が考えるのもおかしくはない。何よりも、ざっと50億円の価値がある株をおよそ10分の1で母親が売る動機とは何だったのか。兄、姉らもそれぞれ1,470株あれば6億円近い価値。それを生活に困る立場でもないのに1億円の現金で納得したことになる。最大の"被害者"が7,350株の相続者だったT氏であることはいうまでもない。同氏が最新の遺言状なるものに疑念を抱くのは当然だろう。

(つづく)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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