16日、午後7時20分、一部報道が「西平良将氏、当選確実」の一報を他のマスコミに先駆けて報じた。投票締切は午後7時。開票は午後8時10分から。この発表のタイミングに他のマスコミはおろか、現地有権者からも驚きの声があがった。
「以前、ポカがあったから、今回はかなり慎重にやりましたよ」と、現地記者は語った。以前のポカ(誤報)についてはともかく、開票前に当確を打つのは、よほど差が開いた選挙結果が出た場合である。しかしながら、フタを開けてみると、当選した西平良将氏(37)は8,509票、対して前市長の竹原信一氏(51)は7,645票。その差は864票で、1万6,244人の投票者数の約5%という僅差である。開票前の発表であるから、当確の根拠は出口調査によるもの。まさか、投票箱の中身を見るというわけにはいかない。
実際に、期日前投票から出口投票を入念に行なったという。しかし、その中身は西平4、竹原1、無回答8という割合だったと現地記者はこぼした。結局、無回答のなかに竹原票が数多く含まれており、僅差の結果になった。
やはりというか、現地では冷静に受け止めていた。7時過ぎの一報が知らされるも、両陣営に動きは見られなかった。どちらも互角の勝負とにらんでいたため、開票が進むまで様子を見たのである。しかし、報道では開票後、次々に「西平氏当確」の一報が報じられ始めた。その後、21時30分過ぎの第2回発表(7,600票で同数)になって大勢が決し、21時34分に開票が終了した。現地の状況を知らず、開票の結果まで見ない人々にとっては、あたかも西平氏が楽勝したかのような印象を受けるであろう。
しかし、竹原氏が獲得した7,645票という数が何を意味するかを考えると、今後の阿久根市政が直面する難局が見えてくる。7,645票の数は投票者数の47%、選挙当日の有権者数では38%と3分の1を上回っている。リコールに必要な署名数を超える有権者が竹原氏を支持しているということになる。西平新市長が行なう対話を重視した改革は、有権者の約40%から厳しい目で見られることになるだろう。「竹原氏支持を声に出すと村八分にされる」(阿久根市民)という状況で、支持を続けてきた市民の意思と結束力は固い。
さらに2月20日には、阿久根市議会の解散の是非を問う住民投票が行なわれ、その結果、解散となれば竹原氏を支持する市民グループから過半数の議席を獲得するだけの数の候補が擁立される見通しである。そして、西平氏を支援したとされている反竹原派市議には、市議会リコールの署名縦覧時に、およそ市民に選ばれた代表者たる市議として信じられないような行為、市民への圧力(後日、詳細を報告する)の事実も知らされている。
そうした状況に置かれていることは、当選した西平氏自身、よく分かっていることとは思う。西平氏は市議会、市民との対話を重視すると訴えてきたが、その実、問題市議会との距離をどうとるかが課題となるであろう。
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