会社更生法の適用を申請し、企業再生支援機構の支援のもと経営再建中の日本航空(JAL)は、監査法人を新日本有限責任監査法人からあずさ監査法人に変更した。JAL破綻の遠因には、担当していた新日本が粉飾まがいの決算にお墨付きを与え続けたことがある。監査法人の責任も大きいのだ。
JALの疑わしい会計処理は、航空機を購入する際に正規価格(カタログ価格)から実際に購入に要した金額との差額(値引き分)を機材関連報奨額という科目で営業外損益に計上してきたことにある。JALはいったん航空機メーカーから航空機材を購入し、それを航空機リース会社に転売していたが、その際に実際の購入額は航空機会社から値引きされていたのに、リース会社への売却額はカタログ価格で行なわれたとして、その「差額」を利益に取り込んでいたのである。
こうして計上されてきた金額は2002年度350億円、03年度220億円、04年度484億円にのぼる。この間の純利益が02年度65億円、03年度▲896億円、04年度527億円だったことから、いかにこの機材関連報奨額が大きかったかがうかがえよう。報奨額を一括計上することで、一時的に多額の利益することはできたものの、リース会社に高く売った機材は後に高いリース料となってJALに跳ね返り、結果として経費増をもたらす。麻薬のような会計処理なのである。
JALの疑惑決算の調査を担ってきたコンプライアンス調査委員会によれば、こうした慣行は10年以上も前から続いていた。同業の全日本空輸(ANA)、日本エアシステム(JAS、現在はJALに吸収)でもおこなわれており、日本の航空界で悪しき慣行になっていたようだ。したがって、JALが際立って悪質というわけではないのだが、コンプライアンス委の弁護士や公認会計士がこの問題を追及し始めるや否や、昨年JALの監査を受け持ってきた新日本の幹部たちが弁護士たちに「ご説明」にあがったという。
「とにかくお手柔らかにということでした。粉飾決算の責任を追及されたくないというのがありありでした。相当焦っているなと感じました」、そう同委員会のメンバーの弁護士は打ち明ける。
【尾山 大将】
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