昨今悪化している大学生の就職内定率。根源には日本全体の景気悪化があり、その象徴とも言えるが、果たしてそれだけで片付く問題だろうか。大学生へのアンケート調査、弊社内でのディスカッションなどを通して、どこに原因があるのか見ていく。その先に見えてくるものとは――。
<"理想"と"現実"のギャップ>
2011年3月に卒業する大学生の就職内定率は57.6%(10月1日現在、厚生労働省・文部科学省調べ)。前年同期比では4.9ポイント下回った。この数字は、就職内定率を調査開始した1996年以来、過去最低水準だったという。
現役大学生の親たちの世代は、大学に進学さえすれば、会社規模の大小に関わらずどこかしら就職先があっただろう。しかし、今はそうではない。就職内定率からも、大学生を取り巻く就職活動の厳しさが伝わるだろう。
では、なぜこのような状況になっているのか。
ある大学の就職課に、「就職内定をもらっている学生ともらえていない学生の差は、どこにあるのか」と質問した。すると「コミュニケーション能力、自主的な行動、自主的な考えを持つ」という返答があった。ほかの就職斡旋を手掛けているところでも、同じ答えを聞いた。もちろん、大学生が描く就職活動への"理想"が間違っている、ということではない。"理想"はあっても、その前提に"現実"があるということを認識できていないからではないか。
筆者も、今年から働き始めたばかりの駆け出し社会人だが、大学生時代に描いた"理想"と"現実"のギャップが大きく、初めはとまどった。そのなかで、たくさんの人たちから"現実"を勉強させてもらっている。いかに学生の頃に抱いていた"理想"が甘いものだったか、その"現実"に直面した。
さらに、何のために仕事をするのか、仕事を通じて何がしたいのか、この根幹部分を早いうちから考え、自分なりの答えを出す。このことを、早い段階からしっかり考えず、ただ何となく就職活動をしているから内定がもらえない――"現実"を少しでも考えながら、自分自身の就職活動プランや就職するにあたっての"理想"を考えている学生は、1社だけでなく2社、3社と複数企業から内定をもらっている"現実"がある。
そのほか、弊社で行なったディスカッション、大学生へのアンケート調査などから、大学生側の問題点として「危機感が薄い」などが挙がった。その理由として、「卒業後はアルバイトなどで生計を立てるといった、どこか諦めにも似た考え方をしているから」という。個々人での価値観があるので断定できない面もあるが、同世代間でそのような見方もある。
【長嶋 絵美】
| (中) ≫
*記事へのご意見はこちら