―マングローブは順調に育っていますか。
阿久根氏 今、私たちがマングローブ植林を始めて約4年になりますが、その準備に2~3年かかっています。構想や調査、行政との取り決めをしたり、現地の人びとに考え方を伝えることに時間がかかったのです。現地の人びとに、地球温暖化などの話をしても、なかなか分かってもらえません。それを理解してもらうことはとても大変でした。
日本だったら、京都議定書や排出権など、ほとんどの人は知っていますよね。私が6~7年前にインドネシアのバタムに行ったときは、誰一人その言葉を知りませんでした。現地の行政すら、そのような状況だったのです。ただ、インドネシアもその当時、京都議定書に批准していたのですが、それにも関わらず言葉を理解できていませんでした。
そうしたなかで植え始めましたが、枯れてしまったり、流されてしまったりするマングローブもあります。植えたからといって、全部育っているわけではありません。良い所でも50%の活着率が現状です。
それを考えると、1日の干満でもともと満潮時にはずっと水のなかにあるので、藻などが絡みにくいのです。ところが、ある時期まで育ってくると、満潮時でも海面から枝などが出るようになります。そうなると、藻が流れると逆にマングローブに絡み付き、干潮時に重みで倒れてしまう。そういう絡んだ藻などを、地元の漁師さんたちに手作業で全部取ってもらいます。それで、やっと大きく育っていきます。
実際、1本植えることの手間ひまを考えると、育てるのは数十倍、数百倍の手間がかかってしまいます。ましてや、まだ森にはなっていませんので、それを森にすることがいかに大変かということです。普通の内陸地よりも、悪条件の場所で仕事をしています。内陸の木で50%の活着ということは、ありえないことだと思います。
―今後の課題とは。
阿久根氏 この仕事をしていて、よく「何か協力したい」ということをおっしゃってくれる方はいるのですが、まずはいろいろな情報を知ってもらい、現地に行ってもらいたいです。現地に行くと、「やらないといけない」という気持ちになると思います。今すぐ応援したいけど、どうしたら良いのか分からない、自分自身がどうしたら良いのか分からないという人も、現地に行けばマングローブだけでなく、こんなこともしなければいけないのかという気持ちになると思います。
日本は平和な国です。ほしい物は何でも買えるし、いらなくなった物は捨てればいいという人もたくさんいるでしょう。しかし、現地に来ていただければ、そうした意識を見直せると思います。ですから、応援していただける方は、まず現地を見に来てほしいと思います。
【文・構成:長嶋 絵美】
▼(株)ワイエルインベスト
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