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『牛丼戦争』もグローバル化の時代へ(1)
特別取材
2011年1月24日 13:30

牛丼戦争 外食産業のなかでも根強い人気を誇る牛丼。大手マスコミは牛丼チェーン主要3社の争いを、『牛丼戦争』と囃したて報じてきた。最近の論調は「老舗の吉野家が苦戦、後発のすき家(ゼンショー)と松屋は堅調」というものだ。こうした論調は、既存店の売上高の増減を基準にしているのだが、実際はそれだけで企業の優劣を判断することはできない。極論すれば、売上高が増えても利益が増えるとは限らないからだ。既存店の前年対比での売上減を理由に、「負け組」とのレッテルを貼ったマスコミをあざ笑うかのように、吉野家は今期、大幅な増益を達成しようとしている。

 吉野家は、今年に入り伊藤忠商事が保有していた吉野家HDの全株式を買い取る方針を発表した。伊藤忠商事は2000年に吉野家HDに出資し、両社は食材取引などを続けてきた。09年には吉野家と伊藤忠商事、中国の食品大手である頂新グループで、中国での牛丼店の合弁事業を打ち出していた。結果的に、この合弁事業は実現せず、吉野家は自前で海外戦略を加速させる方針を決めたようだ。吉野家は中国の店舗網を現在の約260店(香港含む)から1,000店にする方針を打ち出している。
 
 牛丼という、いかにも日本的な「どんぶり物」が、国内でのシェア争いからグローバルな争いへとシフトしていくことは、低迷する内需と現在のグローバル化する経営環境を象徴的に表しているとも言えるだろう。
 
 ここでは牛丼チェーン主要3社の現状を分析しながら「牛丼戦争」を検証してみる。

<3社で異なる牛丼事業の位置付け>
 
 マスコミが牛丼チェーンのシェア争いを「牛丼戦争」と囃したてるのは、デフレ時代を象徴する価格競争として非常に分かりやすいためだろう。まず老舗の吉野家が存在し、さらに経営者がかつて吉野家に在籍したゼンショー、そして吉野家に影響を受けて牛めしを始めたと言われる松屋といった、「老舗対新興」の構図が牛丼戦争をよりドラマティックなものにしている。

 「牛丼」を扱うナショナルチェーンの値下げ競争は、庶民の食事代の減少に置き換えられ、すなわちデフレの進行として語られる。客単価の減少はやむを得ないものとして、いかに客数の増加でカバーしていくかがポイントとされ、それがデフレ時代の経営だと論じられる。これは一般論として正しいのだが、その事例として語られる牛丼チェーン3社に完全に当てはまるかというと、そういうわけでもない。3社とも牛丼だけを扱っているわけではなく、また牛丼の商品としての位置付けも企業によって異なるからだ。
 
 吉野家、ゼンショー、松屋フーズの3社は、今年1月11日から約1週間、牛丼の期間限定値下げを実施した。最安値は牛めしの並盛りを通常より80円値下げし240円にした松屋フーズ。「すき家」のゼンショーも牛丼の価格を30円値下げし、並盛りを250円にした。吉野家は牛丼の価格を通常より110円値下げし、並盛りを270円にした。

 この240円~270円の価格で顧客を奪い合っているのだが、それぞれの事業戦略と商品戦略があるため、単純に価格差が勝負のポイントと捉えることはできない。もともと松屋は「牛めし」を中心とする定食メニューの豊富さで人気を得てきた。すき家はトッピングとサイドメニューで利幅を稼ぐ戦略である。これに対して吉野家は単品主義を標榜してきた歴史がある。

 さらに牛丼の位置付けも各社によって異なる。すき家がゼンショーの一大外食産業グループの牛丼事業という位置付けであるのに対して、松屋は牛丼を中心とする牛めし定食事業が事業のほとんどだ。吉野家は牛丼事業が中核だが、それ以外の外食事業にも取り組んできており、両社の中間的な印象である。ちなみに各社の牛丼に関わる事業の売上高は、ゼンショーの牛丼カテゴリー売上高が1,294億円、吉野家の牛丼関連事業売上高が1,021億円、松屋の牛めし定食事業売上高が586億円(いずれも2010年期決算)となっている。

(つづく)

【緒方 克美】


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