学校法人 福岡工業大学・短期大学部 学長 下村 輝夫 氏
<日本人とは何かというアイデンティティー>
―日本の大学が世界の大学と競争していくことは避けられないですね。
下村 「JUNBA」の話に戻りますが、国際的にどうするか、単なるコラボレーションではなく、それぞれの立ち位置からそれぞれの国力をどう高めていくかということです。
各校いろいろな取り組みをされていますが、当校の特色で言えば、事務系職員の方々を「FASTプログラム」(FIT Administration Staff Training、FITは福岡工業大学のこと)というかたちで3~4名を1チームとし、4組計14名を2カ月間、サンフランシスコに送り出しています。さまざまなコーポレートガバナンスを学んでもらい、中堅を育てていくのが目的です。これが非常に重要で、教員の方々はよく行かれるのですが、事務系職員が行くケースはほとんどないですね。
当法人としては「常に世界の一流を目指そう」ということで、私のミッションは教育内容がそれについていくようにすることです。先生方からすると、法人としての志の高さというのをすぐには理解できませんから、それをどう高めていくかが私の役目ですね。
―それができる社会的意義とは何でしょうか。また、指標を何に置かれていますか。
下村 やはり、ほかの大学と差別化して世界のFITにしたいということですね。今、指標として置いているのは、教員のレベルアップです。「FASTプログラム」は、日本のなかでは1歩も2歩も先を行っていると思います。あとは、全体がそこにどう付いてくるかでしょう。
では、国際化とは何なのかという議論も出ました。私は、それは「日本人とは何かというアイデンティティーを問い直すこと」だと思います。海外に出て行っていろいろな人と交わると、日本人とは何だろうと考えさせられます。海外を嫌う人もいれば、すごくのめりこんでしまう人もいて極端ですが、そうならないようにアイデンティティーとは何かを問うことが重要です。
ある人が「英語がお上手ですね」と言われたが、それは必要性があったから覚えただけの話で、中国語が必要ならば覚えますとのことでした。語学はスキルのひとつに過ぎないことを示唆しています。 一番重要なのは日本人としてのポジショニングであり、もっと言えば日本の将来をどうしていくか、若い人がどう考えていくかです。
そうするためには相手と言葉を交わさないといけませんから、たしかに語学は必要です。また、他国の人とディスカッションするとき、日本というのはどのような国で、どのように進もうとしているか問われたときに、しっかりと答えきる力も必要です。
【聞き手:弊社ネット事業部リーダー 児玉 崇】
【文・構成:大根田 康介】p>
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