岩倉社長としては、周辺での売買事例からして9億円である程度の販売可能性はあり、またすでに工事が相当に進捗しているため、竣工させたほうが、まだ出血が少なかろう、という判断であった。その旨、社長より会計士に報告し、第1四半期決算は、そのままでゆくこととなった。
会計士の責任者は以下のように述べた。
「会社がきちんと検討した結果のことなのであれば、私たちが文句を言う筋合いのものではありません。しかし、役員間の不協和音があることが私たちから見ると御社の最大のリスクです。ひとりの方から話を聞くと、他の方への批判ばかりです。そんな状態ではこの難局を乗り切ることは到底できません。そこで石川さんには大変ご苦労と思いますが、何とか、営業系役員の意思統一を図っていただきたい」
そこで私は翌週に臨時取締役会を招集し、今回の第1四半期決算の報告をするとともに、上記の経緯を説明した。また、資金繰りを維持するには、物件の販売順序が重要になるため、それを簡潔に記した一覧表を作成し、江口常務の名において営業本部内にて徹底してもらうようにした。
社内でデマが飛び交っていた大分ホテルは、融資借換えも難航していた。無論、売れていない以上借換えするしかないのだが、銀行側は支店長が自ら乗り出してきて、2~3億円の内入れ(部分返済)が必須で、その場合でも3カ月の延長は厳しいといってきていた。しかし、この時点の当社には、数億円単位の金を銀行返済に充てる余裕は既になく、ギリギリの線として数千万円を返済することでお願いした。借換えの結果、金利はノンバンク並みとなったが受け入れざるを得なかった。
この銀行が求める状況報告は、当初はFAXで毎週であったのが、営業担当取締役に毎週面談する状況になり、8月の借換え以降は、ストレートに支店長が、黒田会長にアポイントを入れてくるようになった。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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