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世界を飲み込む水危機と中国 日本の切り札「水技術」(5)
未来トレンド分析シリーズ
2011年2月 1日 07:00

水 水は石油以上に人類の生存や生産活動に欠かすことができないものである。原油から石油1バレルを生産するためには1,800ガロンの水が必要とされる。1リットルのエタノールを製造するためには4,000リットルの水が必要である。また、バイオディーゼル1リットルを生産するにも900リットルの水が欠かせない。こう考えれば、水こそが富を生む「金塊の液体バージョン」ということもできるだろう。

 欧州連合においても、水に対するインフラ整備には潤沢な資金を投入している。衛生的な水を供給するために、ヨーロッパでは、年間2,150億ドルもの資金が注入されている。また、こうした水道供給を安定的に維持するために、老朽化した給水管を今後20年かけて新たに整備しなおす事業だけで7,000億ドルの資本投下が予測されている。オーストラリアでも、老朽化した水道管の更新のために50億オーストラリアドルの資本投下が予測されている。加えて今後10年以内には、新たな水道インフラのために300億オーストラリアドルが投入されるという。

 現在、世界最大の人口を争う中国とインドでは共に深刻な水不足と水の汚染が巻き起こっている。こうした問題を克服解決するために、インドも中国も最低1兆ドルを超える投資が欠かせないと言われている。似たような状況は、メキシコやブラジル、エジプトやほかの中東諸国やアフリカにも広がっている。日本も決して例外ではない。このように、世界全体で見渡せば、水関連のビジネスがいたるところに大きな口を開けて待っていることが想像できるというものだ。

 思えば、地球上の水の中で淡水は2.5%にしかすぎない。この限られた淡水の70%近くは北極や南極などの永久凍土として容易に利用できない状況に置かれている。そのため、我々が簡単に利用できる淡水は地球上の水のわずか0.007%にすぎないのである。この希少な淡水をめぐり、68億の人間とそれを上回る数の野生動物、そして自然環境そのものが奪い合う状況が生まれているのである。人類が生きていくために欠かせない農業や工業製品を生むためにも、大量の水が必要とされる。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。


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