私の連載記事において、こども病院のアイランドシティ(人工島)移転問題の再検証を実施する「こども病院移転計画調査委員会」の運営方針が非常に透明性が高く、高島市長の「決意と覚悟」を感じる画期的なものであり、残された留意事項は、今後の進め方として「調査委員の実際の調査検証への関わり方」が大切であることを提言させていただきました。
具体的には、委員のみなさんが、行政サイドが加工した情報ではなく、第1次情報つまり、生の情報に触れていただくようにするなど、意図的な誘導への疑念を市民に抱かせることがないようにすることが重要であることを申し上げました。
しかし、意図的な誘導を疑われてしまう大変残念な出来事が起こってしまったようです。
新聞報道によれば、表紙に赤で「秘」と記され、「会議進行の手順(想定)」として3月末まで5回開く会議で話し合う内容などが書かれた文書を、委員11人のうち、患者家族代表の委員と市民公募委員2人の3人だけに渡していなかったとのことで、その文書には、留意点として「病院機能、経営形態などに議論が広がらないよう留意」「一部の反対者が自説を曲げない場合は、各論併記となることもやむをえない。ただし、その場合、多数意見がどれか分かるように集約」などとも記されていた。とのことです。
高島市長は、問題となった文書をすぐにホームページで公開するなど、的確な対処をされました。
その文書の内容を拝見すると、表紙に大きく赤字で「マル秘」と記載しなければならないほどの機密事項とは到底考えられない内容でした。『情報を外に出すことに抵抗を感じてしまう役人の体質』がついつい顔を出してしまったのかも知れません。調査委員会の事務局のみなさん、ここが踏ん張り所です。勇気を持って開かれた運営に尽力していただきたい。
これまでの私の連載に書いてきた全国初の協定方式による第三セクター情報公開制度を取り入れた福岡市の情報公開条例の立法作業も、情報公開審査会の会議をマスコミや市民に全面公開して行ないました。私は事務局として携わっていましたが、「シナリオを準備して議論の流れを誘導していく」という、それまで市役所内でよく行なわれていた審議会事務局の運営の通例とはまったく異なり、一切の誘導なく、本当に自由に審査会の委員の方に議論をしていただきました。
担当者としては、審査会の会議の回数や答申を公表する日程は決められているし、スケジュールどおりに進むかどうか、ハラハラした経験があります。そして実際に、その日の会議の審議項目に対する意見がまとまらずに、継続審議となり後に送られてしまう項目が相次ぎ、肝を冷やしたりもしましたが、結果的には、素晴らしい内容の答申をいただきました。
調査委員会事務局のみなさんも、ぜひ委員の方々の見識と良識を信頼し、勇気を持って一切の誘導をなくし、高島市長の熱い思いに応えてください。そして、今回の再検証が、真に市民のみなさんの信頼と納得を引き出すことが出来る結果となるよう切に願っております。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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