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「迅速・安全・確実」に花キ輸送～（株）イトキュー・中原常務

福岡への提言

2011年2月 3日 15:12

（株）イトキュー　常務取締役　中原　昌臣

＜西日本ナンバーワンの保有台数＞

　街中でよく見かける、赤と緑のロゴマーク「花と緑」がついたトラック。すべて「株式会社イトキュー」が所有する花キ輸送車で現在は140台、西日本ナンバーワンの保有台数を誇る。「生きた花を、いかに良い状態で迅速に届けられるか。それにこだわり続け改善を重ねてきた結果、多くの花キ関係者から取引依頼が来るようになりました」と語るのは、現場を取り仕切る中原昌臣・常務取締役である。
　父・中原俊喜社長が約30年前、農家からの依頼を機に輸送を始めた花キ類は、「車の揺れ」「温度・湿度」などが影響するデリケートな商品。俊喜社長は、花キ業界の研修で欧州を訪れ、はるかに先進的な花キ物流の技術・システムを知り、社内での改革に乗り出したという。
エアサスペンションを搭載した輸送トラック　まず「車の揺れ」は、車メーカーと協力して、トラック向けのエアサスペンションを国内で初めて導入。その一方で社員には、荷台に置いた容器の水をこぼさないように運転するテクニック訓練を実施した。また、鹿児島から東京までといった長距離輸送で「温度・湿度」が大きく変わる環境に耐えられるよう、ヒヨコ輸送車をヒントに、温水ヒーターとプラス５℃からプラス20℃まで管理可能な冷凍機を独自に開発した。温・湿度は24時間体制で本部がデータ管理し、車両の動態情報も把握できるシステムを確立して顧客からの問い合わせにも即応している。
　こうしたハード・ソフト両面における改善によって、「３S（Speedy・Safety・Steady）、迅速に、安全に、確実に」という理念が実現。取引先も九州にとどまらず四国・中国・東海地方まで広がっている。

＜花・人・環境に優しいELFシステム＞

　「ただ商品を早く運べばいい、という姿勢では会社も業界も発展できない」と話す昌臣氏。実は花キ物流業界では、花の輸送中に一部が傷んでも「仕方がない」と思われてきた面すらあった。「消費者に『また○○の花が欲しい』と言ってもらうために、店、生産者はもちろん物流業者も、こだわりと工夫の努力が必要なのです」。そう力説する昌臣氏が、新たに他社と共同開発したのが花キ用バケットを使った「ELFシステム」である。
　同システムは、これまで段ボールに梱包されていた花を、プラスティック製の水入りバケットに入れて輸送する。市場を経由して店頭でもそのまま使え、使用後は回収されて農家が再利用できる。料金は農家のみが負担、しかも段ボールと同じぐらいの値段で「ゴミも積み替え作業も減った」と喜ばれている。一方、市場での鮮度や見栄えの良さから段ボールの商品よりも早く高く買われるという大きな効果も生み出した。
　これまでの実績は広く認められ、最近は商社の委託で輸入切り花の国内輸送も請け負う。しかし、昌臣氏は「日本の花キ業界は、まだ今の欧州レベルには届いていません」と話す。欧州の市場では花の"賞味期限"が明示され、抜き打ち検査で傷んだ商品が見つかると生産者は出荷停止処分を受けるという。「徹底した品質保証のためには、それを支える環境も整っていないと。日本でも『この花は２週間保証』と書かれる時代が来る日のために、一歩も二歩も先を見て、受け皿となる技術とシステムを確立したい」（昌臣氏）。同社が行なってきた改善や課題解決のあり方は、そのほかの流通・物流業界にとってもヒントになりそうだ。

＜プロフィール＞
中原　昌臣（なかはら　まさおみ）
1973年、糸島市（旧前原市）生まれ。専門学校卒業後、愛知県のプラスティック総合製造メーカーに就職。02年帰郷、「（株）イトキュー」に入社した。現在、常務取締役、営業本部長兼企画事業部長を担当する。