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福岡への提言

商品に愛情込め、"遊びの部分"大事に～（株）アイアンドエム・西村社長

福岡への提言

2011年2月 6日 07:00

（株）アイアンドエム　代表取締役社長　西村　光洋

＜ITから卸売業へ軸を転換＞

様々な茶を試飲できるお茶専門店「火の茶房ほうじ屋」　博多リバレイン「イニミニマニモ」地下２階のお茶専門店「火の茶房ほうじ屋」。嬉野や京都宇治の厳選茶葉を使ったほうじ茶や紅茶、穀類・野草入りブレンド茶などが並び、カフェスタイルで試飲できるしゃれた店だ。
　同店を運営する「株式会社アイアンドエム」は、2006年の設立時、実はＩＴ関連会社としてスタートした。Ｅコマース事業のコンサルティングなどを行なっていたが、『どうせなら代わりに商品を売ってほしい』という依頼が増え、卸売業も手がけるようになった。「せっかく良い商品でも、売り方しだいでは陽の目をみないものもある。私たちは、良いモノだと思ったら絶対に売りきる自信があります」とは代表取締役社長・西村光洋氏。同社設立時に誘った、大学の後輩と以前勤めた会社の同僚の営業部隊による大きな支えもあったという。
　ある時は大量のマスクを買い取って通信販売の景品向けに納入し、次からは商品として扱ってもらう。ある時は街中のスーパーで、西村社長らが試食販売を行ない売り切ったところで継続契約を結ぶ。気がつけば、伸びる利益の大部分が卸売業によるものだった。「商品に愛情を持ち、お客さんにも喜んでもらうのが商売の基本。効率化が優先されるデジタルな情報社会だからこそ、人と人の対話といったアナログな営業部分も大事にしたいのです」（西村社長）。そして、卸売業で大きな実績を上げた西村社長が、「常に愛情を注ぎ込める商品」として開発したのが「火の茶房24種ぶれんど効茶」だ。工法のこだわりと品質の良さに魅かれ、メーカーと商談交渉をし、トントン拍子で商品化が進んだ。

＜売り方を工夫したオリジナル商品が好調＞

　自信のあった「24種ぶれんど効茶」も、最初の月はわずか200袋という販売実績だったという。それでも「目標があれば必ず到達する」というモットーのもと、社員総出で販売先を開拓し、温泉施設や産直市場など九州各地60店舗に拡大した。「もちろん、ただ販売先を増やせばいいというものではありません。店舗内には無料試飲ができるサーバーを置いて、現場で商品の良さを説明しました。この商品はスーパーなどで大安売りされるものではありませんが、実は"薄利多売"のつもりです。商品の質には自信がありますから、売り方を工夫すれば必ずリピーターが増えると思います」（西村社長）。
　冒頭に挙げた直営店も、無料試飲してもらいながら、「通信販売や卸売だけでは得にくい、ブランドへの安心感を持ってもらうため」の工夫のひとつだという。さらに西村社長自らが北海道で見つけた和風スイーツを一緒に販売、カフェ感覚で立ち寄ってもらうことで客層の拡大も図っている。カフェ自体の利益は度外視している代わりに、主力商品のお茶は現在月7,000袋超も売れているという好調ぶりだ。
　「近頃は不況で余裕がないからなのか、手っ取り早く利益を出そうとしたり、効率よく売り上げようとしたりする傾向があります。でもモノを売る側には、色々な意味で、商品を売る周辺の"遊びの部分"が必要だと思いますね。最後はやっぱり、人と人との間のやり取りなのですから」と語る西村社長。商人らしい心意気で、早くも新たな商品開発に乗り出している。

＜プロフィール＞
西村　光洋（にしむら　みつひろ）
1975年、佐賀市生まれ。父も石材業を営む社長。大学卒業後、印刷会社、保険会社を経て、06年、株式会社アイアンドエムを設立。父は、師であり、一番の相談相手だが、ライバルであり、超えるべき目標でもあるという。