(株)一蘭 代表取締役社長 吉冨 学 氏
今や福岡のとんこつラーメンの代名詞とも言える存在となった「一蘭」。1960年に創業し、その後、現社長である吉冨学氏が93年に那の川店をオープンし、現在に至る。福岡県内では高めの料金設定であるが、デフレ経済のなかでも順調に成長を続けている。吉冨社長に、今後の戦略について話を聞いた。
<デフレのなかでも増収を継続中>
―2010年を振り返って、吉冨社長にとってどんな年でしたか。
吉冨 2010年12月期は、前期よりも1億円くらい売上が上がっています。売上高は約55億4,000万円です。昨年は景気が低迷したままでしたが、新規出店と改装店舗がありましたので増収となる見通しです。
―昨年は、どちらに出店されたのですか。
吉冨 釜だれとんこつラーメンを提供する天神西通り店と、横浜の西口、もう1店舗は東京の下北沢の計3店舗を新規出店。博多店、横浜桜木町駅前店、八幡の黒崎インター引野口店など計4店舗の改装を行ないました。今期は3店舗ですが、2年後ぐらいから、年6店舗ぐらいのペースで出店し、それまではしっかりと基盤づくりをやっていきたいと思っています。
―吉冨社長の言われる基盤づくりとは。
吉冨 人を育てないといけないと思います。企業は人ありきだと思っていますから。
―他社と違うポイントや、人材教育について何か思い入れなどはありますか。
吉冨 企業として、たしかに営利目的はあります。しかし、その前に、我々はまず従業員が幸せになるということを念頭に仕事をしています。たとえば、社員の妻の誕生日には花束、子どもには図書券をプレゼントするなどしています。
従業員は大切な家族と言いますか、「意思が伝わるか」だと思います。彼らがミスをしても怒鳴ったり、ペナルティーを課したりはしません。ただし、不正を行なった場合は厳正に対処しています。
―企業の大半は、売上を上げることを目標にしています。御社で言えば、今後100億円企業にしたいというような願望などはありますか。
吉冨 まったくないですね。売上目標を立てても、意味がないからです。もちろん、業界No.1を目指す会社などは目標を立てなければならないと思いますが、弊社の場合はそのような必要はないと思っています。他社(ライバル店)の数字は見ますが、意識はしません。「敵は己にあり」と思っていますので。
―当然ながら、企業は営利目的でなければなりません。ですが、御社の場合は、人を育てることで自ずと売上高も上がっていると考えてよろしいですか。
吉冨 そうです。人が育たないと、企業の成長はありませんから。
【文・構成:矢野 寛之】
<プロフィール>
吉冨 学(よしとみ まなぶ)
1964年12月生まれ、46歳。北九州市若松区出身。若松高校、第一経済大学卒。93年9月に1号店となる「一蘭那の川店」開業。95年12月に(有)一蘭として法人化し、代表取締役に就任。福岡のみならず、東京、大阪にも店舗を構える福岡を代表するラーメン店に育て上げた。
(株)一蘭
所在地:福岡市博多区中洲5-3-2
設 立:1993年5月
資本金:4,000万円
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら