ある高級クラブの名物ママが、取材に来たマスコミに激怒した。「あんたたちがね、『不景気、不景気』ばっかりいうけん、お客が暗い気持ちになるったい!」。
いかに世のなか不景気といえども、もうかっている店は当然ある。それはどの業界でも同じで、全部がダメとなれば、その商売をする人間はいなくなるのが道理。中洲でも、つぶれる店がある一方で、次々に店舗数を増やしている威勢のいいところもある。
「人の不幸は蜜の味」ということで購読数や視聴率を伸ばそうということかもしれないが、不幸ばかりが続けばやがてそれは日常となり、人々の関心はより大きな不幸話へと向いていく。激怒したママは、客が少ない時間帯に来て「ヒマな店」だとか、通りに人の往来が少ない時間帯(店の人間が出勤する夕方6時から7時ぐらいや、深夜など)に写真を撮るといったマスコミの姿勢に、「ちょっと待った!」と言いたいのだ。
たしかに、「中洲=不景気」というイメージが定着すれば、観光客も訪れなくなり、地元の客も減り、ますます不景気になっていくだろう。そして、閉店が相次ぎ、本当に暗い話がどんどん増えていく。まさに悪循環である。小生も反省し、気をつけなければいけない。
【長丘 萬月】
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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