(株)一蘭 代表取締役社長 吉冨 学 氏
<コスト高でも県と生産者のために>
―ラー麦の評判、コスト的なものはどうなのでしょうか。
吉冨 弊社はスープに絡みやすくするために、ラー麦を100%使用した特注麺を麺職人が製造しています。ちなみにラー麦の麺は、通常の麺よりもコストはかなり高くなります。それでも福岡県のために、生産者のために協力させていただいております。
―なるほど。コスト高でも使用されているのですね。御社はそのほか、環境についての配慮などをされているとも聞いています。
吉冨 当社ではさまざまな角度から環境への取り組みを行なっています。豚骨ガラのリサイクルもそのなかの1つです。04年に福岡県リサイクル研究センターで発足したプロジェクトに、ラーメン店では唯一、共同研究メンバーとして約2年間研究に携わりました。現在でも福岡工場からは毎月約30トン、横浜工場からは約25トンの豚骨ガラをそれぞれリサイクル会社へ提供しています。
さらに、豚骨ガラからできた肥料を使ってつくる「福岡とんこつネギ」というネギがあるのですが、一蘭では一部でこのネギを使用しています。今後もこうしたかたちでの農業への貢献は積極的にしていきたいと思います。
―現在、29店舗も展開されているので、1日当たりかなりの食材を使われていると思います。ちなみに、1日当たりと年間、それぞれ何杯ぐらいのラーメンが売れていますか。
吉冨 豚骨については、月間約80トン強を使用しています。1日当たり1万5,000杯から2万杯ぐらい売っています。月換算で約50万杯強、年間で約600万杯強ですね。材料にはコストをかけています。
―材料コストをかけられているのであれば、政府のTPP交渉参加にはご関心があるのではないでしょうか。
吉冨 何か新しいことをはじめるとなると、当然良い面・悪い面それぞれが出てきます。政府のTPPへの参加も、マクロ的に見ればプラスになること、マイナスになることそれぞれあるかと思います。どの立場に立つかでそれはまったく変わってくるでしょう。
しかし、より自分の視点に近いミクロ的観点から考えると、市場原理にまかせることで競争が生まれ、より良い発展が生まれるのではないかと思います。そこで撤退することになったとしても、また新たに得意な分野へ新規参入していけば良いのです。
【文・構成:矢野 寛之】
<プロフィール>
吉冨 学(よしとみ まなぶ)
1964年12月生まれ、46歳。北九州市若松区出身。若松高校、第一経済大学卒。93年9月に1号店となる「一蘭那の川店」開業。95年12月に(有)一蘭として法人化し、代表取締役に就任。福岡のみならず、東京、大阪にも店舗を構える福岡を代表するラーメン店に育て上げた。
(株)一蘭
所在地:福岡市博多区中洲5-3-2
設 立:1993年5月
資本金:4,000万円
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