<的外れのプロモーションに意味はない>
昨年6月25日、ホテルオークラ福岡で「第2回福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」が開催された。これは08年3月に福岡県や福岡商工会議所が中心となってスタートした、福岡をアジアのファッション拠点都市として人材育成や産業振興を行なう事業の経過報告会だ。
フォーラムでは、事業の中心となるショーイベント「福岡アジアコレクション(通称:FACo)」に参加した地場アパレルメーカーの取り組み発表などがなされた。
昨年3月に実施されたFACoは、福岡パルコの開業に合わせ同社とタイアップしている。その流れからだろうか、企画運営委員長である吉原一雄大村ファッション専門学校長は、壇上から今年のFACoについても「博多阪急とのタイアップ企画」を公言した。
ただ、パルコタイアップは推進会議の内部から異論が出ており、池浦博文北九州ファッション協会専務理事にいたっては、「県民の税金を使う事業が一私企業と協業するのは、問題では」と麻生渡福岡県知事に問い質したほどである。
もし、2年連続で一私企業と協業するようなことになれば、本来、恩恵を受けるべき地場中小零細のファッション事業者の反発は必至。それでなくとも、ショーは実質、RKB毎日放送の収益事業となっていて、人材育成や産業振興という公共性とはほど遠いものだ。
参加する地場アパレルメーカーは量販系でブランドバリューが低く、ショーは東京からやって来たタレント見たさにお客が集まるというイベント的な性格が強い。また、コレクションといっても、パリコレのようなクリエーションの発信機能はない。
博多阪急にとっても、地場ファッション事業者の反発は避けたいところであるし、バリューの低い量販系商品と自店のブランドを同じステージに出せば、かえって百貨店のロイヤルティを下げることになる。
<顧客を囲い込めても購買促進できるか>
ショータイアップようなプロモーションは別として、博多阪急の営業活動は昨年から始動。その中心となるのが、開業時に20万人を目指すポイントカードの会員獲得である。
開業前に入会すれば、会員は地元出身のイラストレーター、リリー・フランキーなどがデザインしたプレミアムカードが入手できるほか、料理やファッション、化粧品などのイベントにも招待される特典も付いている。
これらのイベントはRKBとの番組タイアップにもなっており、地元メディアと連動して顧客を囲い込もうという戦略がうかがえる。
しかし、西鉄のnimocaはバスや鉄道のほか、系列の商業ビルやスーパーから、岩田屋や三越、大賀薬局、ベスト電器、ローソン、首都圏のキオスクまで利用範囲は格段に広い。
さらに、JR九州のSUGOCAや福岡市地下鉄のはやかけん、JR東日本のSuicaとの相互利用も始まる。カード会員からすれば、こうした利便性の方が入会動機につながるわけで、ポイントカードは店舗の共生へと軸足を移しつつある。
その意味で、利用範囲がH 2Oリテイリンググループのみに限定されるのであれば、購買促進という真の囲い込みにはつながらない。とくに、百貨店はスーパーのように日常の買い物が多いわけではないから、会員が売上を向上させるのは限定的だ。
むしろ、顧客の購入履歴を分析できるようにすれば、テナントやブランドの入れ替え、商品を改編などマーチャンダイジングに活かせる。ただ、これにはインフラ整備などに相当の投資が必要になる。
泣いても笑っても、博多阪急は3月3日に開業する。果たして新幹線のような急加速のスタートを切ることができるか。しばらくは動向を見守っていきたい。
【釼 英雄】
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