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新たな価値提案~JR博多シティVS天神(3)
特別取材
2011年2月16日 07:00

<必ずしも成功していない多角化戦略>

 では、JR博多シティはどんな営業戦略をとればいいのか。そのためにはまずJR九州の事業を見つめ直さなければならない。国鉄が分割民営化されて以降、JR各社が多角化を進めるなか、JR九州は流通や外食分野には積極的に進出し、稼げるところで稼ぐ経営方針を打ち立てた。
 東京にある有楽町イトシア地下の「うまやの楽屋」は、同社の外食子会社が運営。07年には、前成城石井社長でコンサルタントの大久保恒夫氏が再建に携わった「ドラッグイレブン」を買収した。
 人口減少が進む九州でこれ以上鉄道事業には期待できないと、高速船ビートルや屋久島でのホテル事業とともに多角化路線をひた走る。08年にはこうした鉄道以外の売上高は、全体の6割にも達した。
コンビ二のam/pmはファミマに看板を架け替え ただ、99年にエーエム・ピーエム・ジャパンとエリアフランチャイズ契約を結んで始めたコンビニ事業は、大手3社との競争で大苦戦。結局、フランチャイジーがファミリーマートの筆頭株主、伊藤忠商事に 買収されたことで、看板をファミマに架け替えることになった。
 その他、スーパーの「驛市場」は門司店のみで店舗拡大は進んでいないし、従来のキオスクにしても駅利用客が頭打ちでは期待薄だ。
 さらに、分割時に支給された経営安定基金による運用益が減ったのも痛い。これは独立行政法人の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」への貸し付け金利で利益を稼ぐものだが、分割時は300億円程度あったものが低金利で半分近くに下がっている。JR九州はこれまで運用益で経常利益の大半を稼いできただけに、同社の財務基盤は非常にぜい弱ということになる。
 それゆえ一大プロジェクトである博多シティは、何としても軌道に乗せる必要がある。ここはテナント争奪やイベント企画の次元で、駅ビルの営業戦略を論じてもしかたない。真の競争力をもつためにショッピングセンターなどとの同質化に対し、いかに新たな価値提案を行なえるかを考える方が重要になる。

<他社に頼ってばかりで運営企画力に乏しい>

 では、新たな価値提案とは何か。それは駅ビル、デベロッパーとしてビジネスの質を上げることだ。これまで博多ターミナルビルはパルコや三菱地所に頼ってきたことで、デベロッパーとしての運営企画力に乏しい。だからこそ、そのノウハウを自前で高めていかなければならないのである。
 旧国鉄時代のような官僚体質で、駅ビル事業はテナント管理に徹すればいいなどと、考えているのであれば、激化するショッピングセンター競争には勝ち残れない。
JR東日本の駅ビル「ルミネ」から学ぶ点は多い 石田礼助国鉄総裁の秘書を務めた岩崎雄一氏は、JR東日本の駅ビル「ルミネ」の社長として駅ビル改革に携わる時、斬新な計画を打ち出した。それはまず、不動産でなく小売業としての意識を持つこと。そして、テナントの改革を進めてお客を増やし、それをカードとCS(顧客満足)で行なうということだった。
 テナントの見直しは、テナントとお客の双方に満足度調査を行った。お客の「楽しさがない」という声は当然だったが、テナント自身からも「テナント構成に問題がある」という意見には驚いたという。  ルミネはこうした声を参考にしながら、駅ビルでは初めてエステサロンやネイルアートのようなサービス分野を拡充した。カード会員についてもテナントに会員の買い物パターンや属性データを提供したことで、テナントはDMなどの販促で精度の高い顧客リストを作成できるようになった。
 駅ビルの担当者は小売りやサービスに精通してないため、どうしてもテナントの看板やブランドで価値を判断しがちだ。しかし、重要なのはそんなことではない。  マーチャンダイジングの同質化は進んでいないか。あるいは売れ筋のみを追ってはいないか。駅ビルとしてお客に価値を提供できているかを見極め、各テナントに対し価値を提供するためのマーチャンダイジングを依頼し、また一緒になって考えていかなければならないのである。

(つづく)

【釼 英雄】

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