16日に行なわれた福岡県議会本会議における鬼木誠県議の一般質問は、4月の福岡県知事選に関連するかたちでTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも及んだ。麻生渡知事と同知事が推す元内閣広報官・小川洋氏は、経済産業省(以下、経産省)のOB。経産省はTPPの参加を強く主張しており、麻生知事自身もTPPへの参加を容認する発言を行なっている。そこで気になるのは、小川氏がTPPに関してどのような考えをもっているかということである。
鬼木県議は、「お金というものさしで物事の価値を図っていく傾向が最も強い省庁のひとつが経済産業省である」とし、麻生知事が推す小川氏も同様の価値観があるのかと質問した。また、TPP参加を強く進める経産省出身の知事が2代に渡って続くことに、福岡県の農家は危機感を募らせていると、付け加えた。
この質問に対して麻生知事は「何でも金ではかることはない」「非常に偏った見方である」など、まったく取り合わない構えをみせた。
また、麻生知事は「TPP参加の影響をどう考えるか?」との質問には、「情報が少ない」として、現段階で言及することを避けた。
ちなみに質問のなかで鬼木県議は、「TPPにおいてすべての関税をゼロにすると決まっている以上、日本はこれに乗るべきではない。関税撤廃や法律自由化の交渉は、TPPとは別の枠組みで交渉すべき」と訴えた。また、農業以外の分野における影響のひとつとして「低賃金の外国人労働者が多数押し寄せる。人件費の削減の一方で、中小零細企業の倒産とあいまって失業者の増加につながる。給料はほとんどが自国へ仕送りされ、内需も縮小する」と論じた。
なんとか千秋楽をやり遂げたといえる麻生知事の答弁。TPPへの対応について明確な意見を述べず、議論を避けた印象が強く残った。鬼木県議は、取材に対し「選挙で争点となることを避けたのではないか」と感想を述べている。
【山下 康太】
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