3日、千葉県松戸市から4名の市議会議員が、福岡市のこども病院を視察した。取材したところ、松戸市は、福岡市のこども病院移転問題と酷似している市立病院建替え問題を抱えていることが分かった。
松戸市といえば、2010年11月に行なわれた市議会議員選挙で、民主党候補9名のうち現職は全滅、新人2名のみ当選という結果で、民主党への"逆風の象徴"のように報道された。しかしながら同選挙には、病院移転問題も影響を与えているという。
市議選を4月に控える福岡市でも現在、こども病院移転計画についての検証が進められている。松戸市と同様に選挙戦の『風』となる可能性はどれくらいあるだろうか。まずは松戸市のケースを紹介していく。
今回、福岡市を訪れたのは、松戸市議会の会派「市民力」のメンバー。現在の市立病院は、1967年(昭和42年)に『1号館』が建設された。その後、人口の増加とともに病棟が増築されていき、現在は5号館まで存在する。
阪神淡路大震災の後、建築物の耐震性が問われ始めたのを契機として、およそ10年前から市立病院建替えの検討が始まった。ただし、耐震性が問題視されたのは『1号館』のみ。そして2008年12月、移転先の用地として東松戸にある土地(1万1,000m2、約22億円)の取得が市議会で可決されたことが直接的なきっかけとなった。
「市民力」の山中啓之市議によると、最大の問題は、現地建替えに対する十分な検証もされないまま、移転計画が進んだことだという。そして「市民力」のメンバーは、移転用地は破たんした区画整理事業で生まれた土地であり、あまった土地を税金で埋めつつ、さらには『病院でまちおこし』という考え方に、市民の反感を買ったとも指摘する。
2010年1月から2月までの間、移転計画に反対する市民は約3万2千名の署名を集め、「市立病院移転計画の是非を問う住民投票」のための請願を提出。しかし同年4月の市議会で、住民投票条例案が、賛成11人、欠席3人、反対31人で否決された。ちなみに現在、「市民力」に所属する山中市議と谷口薫市議は『賛成』に投じた。
しかし、その直後に行なわれた6月の松戸市長選では、現地建替えを掲げた本郷谷 現市長が約7,500票差で現職を破り当選。そして現在、現地建替え案の検証が行なわれており、3月末には結論が出るという。
開発行政の"負の遺産"といわれる移転先の性質や、計画立案・対案の検証のプロセスが不透明という点で、松戸市と福岡市の病院移転問題が酷似していることが分かるだろう。そして2010年11月、市政の大きな関心事が病院移転問題という状況で、松戸市は市議会議員選挙を迎えることになったのだ。
【山下 康太】
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