岩崎 私は先ほどの本にも書いていますが、"地方分権"論者ではないんです。いわゆる分権というのは誰かから権利を与えられることですが、日本国憲法ではもともと私も主権を持っていますので、そういう意味では民主党は"地域主権"ですけど、私は"地方主権"論者でございます。
また、私は"廃県置藩"論者でもございます。明治維新というのはどうして起こったのかを人材的に見た場合、明治維新に関わった人材というのは、各藩自分たちを自助自立させるための人材育成のための藩校を持っていた。また私塾にしても、有名な松下村塾以外にもたくさんの塾があったと思います。寺子屋レベルから高度な教育になったものもあるでしょうし。
そういう意味では、戦後何十年かは「地方のために」というのはエゴイスティックな話で、根性が狭い人間のように言われていました。どうしても「日本のために」「国家のために」というお題目をつけなければ、理解が得られないという時代がありました。ただ私は、「地方のために」というのが最終的には「日本のために」なるような時代というか、そういう風にロジックを変えていかないといけないと考えています。
そう胸を張って言いきれるのは、いま申し上げたように明治維新というのは各藩が藩のために人材育成をした、私塾っていうそれなりの指導者が自分の思想とか考えを広めるために塾を開いた。そういう人たちが結果的に最後はこの国のために働いたという意味では、地方の人材育成が大局観がないわけではない。逆に、今この国が一番欠落しているのは自立自助の心ですし、やっぱり自尊心ですよね。地域というユニットのなかでの人材育成がいまから重要ではないかと思います。
ざっと見まわすと九州というのは独特で、どの地域もどの県も自尊心の塊のようなところばかりですから、まずは九州というところが自尊、自助、自立のなかで九州の人材育成みたいなものを始める風土というのが非常にあると思いますが、いかがですか。
原口 おっしゃる通りだと思いますね。この前、私は尖閣諸島まで飛びました。石垣は日本で2番目に(経済が)厳しいところですけど、尖閣まで(漁の)船を出そうと思っても、油代が高くて4時間半くらいで行けるところを7時間、8時間かけてゆっくり行かなければならない。これじゃあ領土問題どころの話ではないんですよ。
(石垣島は東京と)経度が15度違うから、もしあそこに(1時間の時差を)認めれば、金融特区ができるんです。要するに為替のリスクをヘッジしなくて石垣や沖縄、奄美でいろいろなことができる。地域が中央にある財源をお互いによこせという時代はなくなりました。「地域主権改革をやれば、自分の地域がどう良くなりますか」とよく聞かれます。答えは「あなた次第です」。あなたが変なリーダーを選べばもっと悪くなります。だって自分でデザインできるわけですから。自分で自分たちを計画する。
いま社長がおっしゃったことで一番大事なことは、地域の誇りです。たとえばロシアの例を挙げると、彼らはナポレオンにこてんぱんに負けるまでは歴史を軽視していたと言われています。サンクトペテルブルグに立派な歴史資料館があるのは、ナポレオンに負けたからです。自分たちの国を守るためには、自分たちの国の歴史や誇りや成り立ちを知らなければ、国さえ守れない。国を守るためには歴史が一番大事だとロシア人は反省したんだと、モスクワの友人が僕に言ってくれました。
いま九州には、たとえば佐賀には「鳳雛塾」というのがあります。これはハーバードビジネススクールの佐賀版です。幸之助さんやカーネギーさんには出会えなくても、地域のカーネギーに出会って地域の経営を自分たちでやっていこうと。こういう動きがいろいろなところで広がってきました。楽しみです。
【文・構成:編集長 大根田 康介】
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