「被告人・宮田騰宏に懲役1年6カ月を求刑します」。女性検事の鋭く言い放った言葉に、傍聴席からはざわめきの声が漏れた。罪名は詐欺罪。初犯で被害金額が50万円弱の詐欺事件にしては、かなり重い求刑といえよう。雑誌編集長としての立場を利用し、同僚の女性を巻き込んで会社の金を騙し取った被告人・宮田に対して、検察が厳しい態度で臨んだことが窺われる。同時に、中小企業におけるリスクマネジメントの重要さを痛感させられた事件でもあった。
2月24日、福岡地裁において、被告人・宮田騰宏(福岡市南区、50歳)の初公判が行なわれた。起訴状によると、福岡市の経営情報会社から委託を受けて情報誌の編集長業務に従事していた被告人・宮田は、2008年4月から6月にかけて、同じく委託を受けて被告の下で誌面製作などの作業を担当していた同僚Y子への借金返済に充てるために、Y子の作業代を不正に水増し計上するなどして、同社から金員を騙し取ったとされる。
罪状認否において起訴事実を全面的に認めた宮田被告は、セミナーチケット販売のノルマを達成したように見せるためにY子に金を借りてチケット代金にあてたこと、その借金を返すために水増し請求を繰り返したことを説明。弁護人からは、会社に損害を与えたことを被告人は反省しており、執行猶予の付いた寛大な判断を求める旨が述べられた。
しかし、当初は「水増し請求」であった犯行手口が最終的には「架空請求」に発展していることや、同僚女性を巻き込んで詐欺の片棒を担がせたこと、及び同僚女性を巻き込む時点で既に詐欺を計画していたことなど、態様の悪質さが否めないことから検察側の重い求刑につながったものと考えられる。
本件は、組織、金額的にも被害は大きくならずにすんだ事例ながら、企業内ヒューマンリスクマネジメントの重要性を訴える事件のひとつである。なお、本件は、(株)データ・マックスが2008年12月4日博多署へ詐欺罪で告訴していた事件。
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