20日に行なわれた阿久根市議会の解散の住民投票は、その開票速報において不可思議な現象が起こった。21時過ぎの第1回開票速報は、賛成1,500、反対1,499。21時30分過ぎの第2回開票速報では、賛成3,800、反対3,798。同様に開票速報が行なわれる選挙では、よほどの差がついてない限り、中間発表では同数となることが多い。この「1票差」と「2票差」が意味するものは何なのか。開票所で一体、何が起こっていたのか―。
開票立会人の話によると、賛成と反対は同数にそろえられていたが、無効票と思わしき「反対」の票が見つかり、発表直前に減らされたという。
第1回の開票時は、「ハイタイ」と書かれていた有効票を発見し、これを選挙長へ指摘。同票は、審査を行なうため疑問審査係へ戻された。市選挙管理委員会(市選管)は取材に対し、「同票は、第2回の中間発表時でも審査中であったため、反対票の数から除外された」と説明。さらに、審査結果は「有効」であったという。
次に、第2回の開票時では、「反対」の文字を丸で囲んでいた票が有効とされていた。開票要領についての事前説明会において立会人は、同様の表記が無効票の1例としてあげられていたと選挙長へ指摘。同票は疑問審査係が確認し、無効票となった。なお、この際、開票の第1点検および第2点検でも疑問審査係へ回されることはなかった。ちなみに、この時の開票作業は、立会人以外、全員が市職員であった。
この2票が、反対の票における第1回「1,499」、第2回「3,798」という奇妙な中間発表の原因となったのである。開票では2回の点検を行ない、有効と無効の判断が難しいものについては疑問審査係へ回される。こうしたプロセスがあってなお、明らかな無効票が最終確認を行なう立会人のところまで流されるのは異例と言える。「意図的にやったのではないか」と疑われてもしようがないだろう。
それというのも、〝消えた2票〟以外にも疑念を感じるケースがあった。最終の開票時、「反対です」と書かれていた2票が有効となっていた。これを立会人が指摘したところ、「意思の表現」などとして判定は覆らなかった(これまでの経緯について、市選管は事実を認めている)。また、立会人によると、無効票の確認時、「賛成」のうえに書き間違えを訂正したと思われる線が付いていた票が無効とされていたという。なお、同票については、指摘によって有効となった。
市議会解散の是非を問う住民投票では、一般に「賛成」と「反対」以外に意図的に余分なものを付けた場合、無効とみなされる。たとえば「大賛成」「大反対」は無効。平仮名や片仮名での表記は有効である。
こうしたややこしい審査基準によって、有権者への事前教育が必要となる。あらかじめ投票用紙に「賛成」と「反対」を印字し、そこに丸印を付けるなど、投票方法をもっと分かりやすいものにするなど、見直しの必要があるのではないだろうか。
また、この開票は、市選管のチェック体制、または住民投票制度のあり方など、決して無視できない問題を含んでいる。しかし、すべてのマスコミは、この事実を黙殺した。立会人は、開票後、解散を支持する市民の前で、上記の経緯をつぶさに語った。その際、複数の記者がその話を耳にしたはずだが、記事になることはなかった。経緯を語った立会人によると、筆者以外に同氏へ取材した記者は25日現在でいないという。
【山下 康太】
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