<追い風を受けるには帆が必要>
『圧勝』という言葉のほかに表現のしようがない結果だった。6日、投開票が行なわれた名古屋市長選挙(投票率54.17%)で、地域政党「減税日本」公認の前市長・河村たかし氏(62)が66万2,251票を獲得、次点に44万6,087票という大差をつけた。
同日、投開票が行なわれた名古屋市議会解散の是非を問う住民投票でも『賛成』が69万6,146票となり、『反対』25万2,921票を大きく上回るかたちで政令指定都市では初となるリコールが成立。一方、名古屋市ではトリプル投票となった同日の愛知県知事選でも、河村氏とタッグを組んだ無所属・新人の大村秀章氏(50)が150万2,571票を獲得し、圧勝した。
市長選に限っては、当初から河村氏の勝利が予測されていた感が否めない同選挙であったが、注目すべきは河村氏が初当選した前回(2009年4月26日執行)の投票率・得票数からの推移である。同選挙の投票率は50.54%、河村氏は51万4,514票(得票率58.57%)であった。そこから投票率で4.13ポイント増、票数では14万7,737票も"民意"を上積みした。
河村氏の公約をめぐる市議会との対立、リコール署名運動、その無効署名に対する異議申し立てからの逆転などといった一連の流れのなかで、一貫した政治姿勢を保持した河村氏。一方の市議会も市民へ反論を訴え続けていたが、一部で議員報酬の期間限定削減、あるいは市民税10%減税を容認するなど、市民の顔色をうかがうような中途半端な妥協姿勢を見せた。そうした『保身』という言葉がちらつくブレる姿に、市民の心はさらに離れていったとも考えられる。
河村氏の政策を支持する名古屋市民の『ナゴヤ庶民革命』は、いよいよ最終戦・市議会議員選挙に突入する。あらためて民意の実像を数字で再確認し、さらには県政の後ろ盾もできたことで、状況は、過半数の議席獲得を目指す河村氏率いる『減税日本』の候補予定者にとってますます有利だ。
現・市議会に「NO」を突きつけた70万の民意。数だけを見ると"河村軍団"の圧勝がすぐに思い浮かぶも、各区で争われる市議選は局地戦であり、無名の新人たちが、この強力な追い風をどう受け止めるかが重要だ。ヨットも帆を張らなければ動かない。実際に、市長選中でも選挙経験者から減税・新人たちへの選挙に関する教育が熱心に行なわれていたという。3月に実施される市議選まで残り時間は少ない。
対する現職市議たちは、自分の縄張りの地盤固めに躍起だ。しかし、そうした"しがらみ"から脱却して民意が動かなければ、本当の意味での『革命』は成立し得ない。また、その状況下で選ばれた市議は、現職・新人問わず"公のために働く人物"と認められた存在である。
【山下 康太】
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