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特別取材

欧米有力英字新聞Financial Times から世界を読む(1)
特別取材
2011年2月 7日 13:20
国際政治経済評論家 中田安彦(SNSI研究員)

 北朝鮮による砲撃事件や尖閣諸島漁船事件など昨年はアジア絡みの安全保障上の事件が相次いだ。今年になって1月19日の中国の胡錦濤・国家主席の公式訪米が"表面上は"つつがなく終了し、昨年のもうひとつの懸案であった欧州の債務危機が欧州共同債の発行で一段落付いたと思ったが、1月中旬から欧米のメディアをチュニジアのベン・アリ政権転覆のニュースが席巻した。この事件は政権への不満をいだいた失業者の若者が去年暮れに焼身自殺したことが契機になっている。この若者が先月4日に死亡したことで政権への積もり積もった不満が、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・メディア・ネットワークを通じて「ざわざわ」と広がっていたのだ。

 ことが北アフリカの一国であるチュニジアにとどまれば大した問題ではなかっただろう。ところが、火の粉はシナイ半島とスエズ運河という船舶輸送の要衝を擁するエジプトへと飛び火した。エジプトのホスニ・ムバラク政権へは隣国イスラエルやアメリカとの関係を無難に保ちながら、30年にも及ぶ独裁体制を敷いてきた。ところが今年後半に行なわれる大統領選挙も近いこともあり、反体制派の不満がたまって来たようだ。

 もともと、次の大統領選挙に関しては、IAEAの元事務局長で、過去にノーベル平和賞を受賞した、モハメド・エルバラダイが意欲を示していた。が、エジプトの憲法上の制約から政党指導者ではないエルバラダイは出馬出来ないことがネックになっていたことを、英国のFT紙など主要メディアは2009年の暮くらいから報じていた。ところがここに来て本格的にエルバラダイが反政府勢力を糾合する存在として浮上してきたわけだ。

 注目すべきは世界覇権国アメリカの存在である。日本でも報道されているが、アメリカの歴代政権は反イスラエル感情を封じ込める軍制をしくムバラク政権を便利な存在として重用してきた。前のブッシュ政権はアフガニスタン戦争とイラク戦争というふたつの「テロとの戦い」を仕掛けたわけだが、これはアメリカの軍産複合体や石油産業に睨みを効かせていた、デイック・チェイニー前副大統領やドナルド・ラムズフェルド元国防長官の影響が大きい政権だったためだ。彼らがイスラエル・ロビーというアメリカのネオコン派と言われるタカ派たちと気脈を通じて戦争という公共事業を行なったのであるが、その際に必要となるのは、戦闘行為が終わった後、アメリカの意向を汲んでかの地を統治する現地権力者たちである。つまり、戦後日本をアメリカが統治した際に重用した、元革新官僚の岸信介元首相のようなある意味では裏がある人脈を重用する必要があった。アフガニスタンでその役割に選ばれたのが、現在の大統領のハミド・カルザイであり、イラクではCIAとつながりのあるイヤド・アラウィ暫定政権首相であった。カルザイはアメリカの石油会社ユノカルのコンサルタントを務めたほか、アフガン空爆直前にはCNNなどのメディアに頻繁に出演し、現地情報を伝えていたほどだ。

(つづく)

<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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