アビスパ福岡(株) 代表取締役社長 大塚唯史氏インタビュー
<ファン増大と地域密着>
─観客の動員についてですが、J1ではどのくらいの数を見込まれるのですか。
大塚 10年シーズンの最低が5,000人、平均が8,800人でした。J1での今期は、固く見て平均1万人。10年シーズン最終戦の動員数が1万4,713人でしたので、本音としては1万3,000人くらいを目指しております。そのポテンシャルはあります。
また、対戦相手もJ2とは違います。同じく再昇格する柏レイソルは、同じディビジョンで戦ったなかで、本当に強いと感じました。そのような2倍、3倍強い相手と対戦していくので、挑むという気持ちが大切なのです。
アビスパは、若い力が中心ですのでチャレンジする姿勢を全面に押し出して戦わなければなりません。伸びしろも十分あります。そして、地元出身の選手が活躍することで、もっと盛り上げる可能性はあります。それが誇りとなるのです。
─サッカーのファン増大に関して、アビスパの健闘が一番ですが、総じてどのようにお考えですか。
大塚 新たに鳥取(ガイナーレ鳥取)がJFLからJ2へ昇格しますので、Jリーグは38クラブとなります。J2での地方で活動しているクラブが底上げしていくことへ、チャレンジしていかなければなりません。Jリーグが掲げている「地域密着とは何なのか」ということを、再認識することです。「地域密着」という言葉は美しいですが、地域密着とは街に溶け込むことです。では、溶け込むには何をすればいいのでしょうか。
たとえば以前、プロ野球では、パ・リーグがセ・リーグより盛り上げるためにキャンペーンやイベントを積極的に行ない、逆転現象を起こしたことなどがあります。つまり、「J2が面白い」というストーリーを作るなどして、盛り上げていくことです。
たとえばアビスパで言えば、「お金じゃないんだよ」という独自のスタイルを確立していきたいです。そして、九州のクラブが全部J1で戦いたいです。将来そうなってくれば、Jリーグは面白くなりますね。
─「福岡の元気」がアビスパの強さの源だということを、市民に対してさらに浸透させていかなければなりませんね。
大塚 我々サッカーをはじめとして、福岡はスポーツ分野で恵まれている環境です。野球・サッカー・バスケット・ラグビーのトップクラブ・球団が、年2回「スタージャンプ」という「いろいろなボールで遊ぼう」という切り口で親子のスポーツ教室(小学校3年生までを対象)を、体育協会のサポートも含めて実施しています。大人の元気は子どもたちからもらえますから、今後も継続していきたいです。トップアスリートたちとの触れ合いにより、スポーツを通じて福岡を盛り上げていく担い手となっていくことです。
─アビスパにおいても、地元出身の選手の活躍が大いに期待されます。
大塚 そうですね。たとえば、ディフェンダーの山口和樹は、福岡大学から入団したのですが、彼は原中学出身です。フォワードの吉原正人は、今宿小学校出身です。何かの機会にサポーターやファンに対してマイクで「原中学出身の山口です。今宿小学校出身の吉原です」と自己紹介することで、サポーターやファンとの距離がグッと縮まります。他県から加入の選手でも、福岡を好きになればそれで福岡の人になれるわけです。
【文・構成:河原 清明】
<プロフィール>
大塚 唯史(おおつか ただし)
1961年、神奈川県川崎市出身。上智大学卒業後、電通関連の広告代理店などを経て、95年より電通九州に勤めてきた。03年、プロ野球の福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)の優勝パレード運営に参加。アビスパの公式記録員や女子サッカーなでしこリーグ1部、福岡J・アンクラスの運営責任者などもボランティアで務める。09年、電通九州大分支社長に就任。10年、アビスパ福岡代表取締役社長に就任。
アビスパ福岡(株)
所在地:福岡市東区香椎浜ふ頭1-2-17
設 立:1994年9月
資本金:1億2,599万円
売上高:(10/1)10億614万円
URL:http://www.avispa.co.jp/
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