中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
2010年中国の高速道路の総延長距離は、7万4000キロメートルに達し、世界第2位となったと発表された。日本の約10倍だ。急速なモータリゼーションの発展とともに道路建設も急ピッチで進められている。日本の総延長距離なんて2~3年で建設している計算だ。
郊外の高速道路を実際に走ってみると、その理由がわかる。都市部では日本のように高架タイプでガードレールが敷設されているが、郊外では道幅の広い一般道のようだ。トンネルもほとんどなく、一直線の片側2車線道路が延々と続く。しばしば近くの農民と思われる人が鍬などを持って横断している。今後、交通量が多くなれば、命がけの横断になるかもしれない。
サイドにガードレールはなく、中央分離帯も2メートルほどの間隔で植樹されているだけである。
こうした合理的な(簡易な)道路建設のおかげで私たちは命を救われた。私たちを乗せた車は青島市郊外の、開通して間もない高速道路を走っていた。
さほど景色の変わらない直線道路が延々と続くなか、運転手が居眠りをしたのだろう。私たちを乗せた車が時速100km以上のスピードで中央分離帯に乗り上げたのだ。ドミノ倒しのように中央分離帯の木々を20本ほど倒して、元の車線に戻り、さらに50mほど行ってやっと止まった。幸いにも同乗者は4人いたが誰ひとり、かすり傷も負わなかった。
日本だったら中央分離帯のガードレールにぶつかって、横転して、大惨事になっていただろう。中央分離帯の縁石が低かったため、運転手が正気に戻るまでのわずかな間、縁石をまたいで育ちきっていない木がクッションになりながら減速したのである。まだ開通したばかりで交通量が少なかったことも幸いした。その後、私たちは別の車で移動し、事なきを得た。
あとから聞いた話では、車の修理と植樹費用は保険で解決し、運転手にはおとがめなしということになったようだ。もちろん、理由は「猪か狸が突然現れ、とっさにそれを避けようとして中央分離帯に衝突した」ことになったようだ。
誰も動物などは見ていなかったが、この言い訳も中国らしいというべきだろう。
【杉本 尚大】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら