<対中国ビジネスは"七転び八起き"の精神で>
中国の成長は著しいが、マーケットとしては非常に魅力的だ。ただ、その魅力に釣られて、中国市場を攻めて、2~3年で成果が出なければ、簡単に撤退する企業を、わたしはこれまでに数多く見てきた。大手企業でも、あっという間に進出してきたと思ったら、計画通りに行かないと思うと、さっと引きあげるところもあった。あきらめなければ、必ずチャンスが芽生えると、わたしは考える。わたしは幸運にも大きな組織で、ビジネスをさせてもらえたが、苦しみもいっぱいある代わりに、チャンスもいっぱいある。
七回転んでも八回起き上がるチャンスがあるのが、中国市場だ。現地の人たちと仲良くなるのには、数年はかかる。これまでの日本企業は「技術を教えてやっている」という上から目線というか、帝国主義的な考え方が多かった。そういう発想では、今の中国ではうまく行かない。これから対中国ビジネスを考える企業は、土着型で挑んでもらいたいと思う。
<工場で働く人たちの意識も向上?>
春節(中国の正月)になると、工場は休みになる。すると、いっせいにワーカーさんたちが実家のある田舎に帰るのだが、春節が終わると、たいてい何割かのスタッフは戻ってこない。そのまま辞めてしまうという現象が起こる。工場の管理職にとって、毎年、頭の痛い問題だった。しかし、それが最近になって、その割合が減ってきているという話がある。工場のワーカーたちの給料は大体月額300元(約3,500円)あれば良いほうと言われているが、それでも以前に比べると上がってきている。それだけじゃなく、国民の意識レベルも上がってきていて、だんだん都会的になってきている。実家のある田舎に帰っても、物足りないという気になってきているのではないか。日本の若者の考え方に似てきた気がする。
<2011年は上海に新拠点をオープン>
九州はNEC中国、NEC東南アジアのハブになっていかなければならない。IT関連のトレンドをウォッチするなら、福岡でも東京でも、情報量はさほど変わらない。NECソフトウェア九州は今年4月、上海に「技術センター」をオープンさせる。現地スタッフ10人ほどで、主にワークフロー技術の開発拠点としていきたい。これからは、「現地完結型」のビジネスが求められると思う。
日本人が遠隔操作でマネジメントをして、中国人を使うという考え方は失敗する。現場はものすごいスピードで動いているので、遠く離れた日本の東京から、偉そうぶって指示を出すだけでは、ローカルの現実はわからない。大手企業もビジネスモデルを変えていかなければならないと思う。この厳しい時代、守りに入るところが多いなか、攻めの姿勢を忘れないでがんばっていきたい。
【杉本 尚大】
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