グプタ氏に対する民事提訴に続き、各紙はインサイダー事件の裁判で数十人のゴールドマンの関係者が証言者として登場すると報じ、そのなかにはゴールドマンの現在の会長兼CEOであるロイド・ブランクファインも登場するという。
ゴールドマンは、2010年にも有名ヘッジファンド代表のジョン・ポールソンによるCDO(債務担保証券)への投資絡みで、顧客に情報開示が不十分だったとして民事提訴された件でSECとの間で5億5,000万ドルを支払って和解するということもあった。
去年、日本でもゴールドマンの「悪業」を批判した書籍が何冊か出版された。だが、ゴールドマンに対する金融当局の追求は元取締役へのインサイダー取引の追求という形で新展開を迎えたわけだ。
この事件、進展いかんではグローバル経済のキーパーソンがインサイダー事件に関与していたという超弩級の衝撃を与えそうである。それを表すのがラジャト・グプタの華麗なる人脈だ。まず、1973年にハーヴァードビジネススクールを卒業後に入社しトップに上り詰めたマッキンゼー社での経歴のほかにも、グプタ氏は国際商工会議所(ICC)という非金融系では世界で最も有力な経済団体の理事長である。
(リンク:Rajat Gupta: Touched by scandal - Oct. 1, 2010)
また、去年までは世界経済フォーラム(ダヴォス会議)の理事会メンバーだった。その他、最近まで多国籍企業のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の取締役であったし、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やロックフェラー財団といった慈善団体の理事にも名を連ねている。WSJ紙のコラムニストは彼の華麗なる経歴を称して、「グローバルビジネス界の殿堂であり、トリプルAにランクされる人物である」としている。
(リンク:Mean Street: Davos Man Rajat Gupta in Bizarro World - Deal Journal - WSJ)
このガリオン事件ではマッキンゼー社のパートナーがもうひとり、半導体メーカーのAMDやイーベイに関する非公開内部情報をガリオン側に伝えたということで容疑を認め、訴追されている。
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。
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