9日、福岡市は条例予算特別委員会総会の質疑応答は、こども病院移転計画に関して、野次が飛び交う紛糾ぶりを見せた。そのなかでこども病院の移転先の候補地としてあがっていた九州大学医学部敷地内について、説明を行なった井崎保険福祉局長は「移転できるほどのスペースの確保が困難である」と述べた。
理由については、2010年8月、九州大学病院長に現状について質問した際、先端医療イノベーションセンターの建設、駐車場の整備、その他の若干の用地においても将来の機能整備用地として確保しておく必要があるとの回答が得られたとしている。栃木義博市議(民主・市民クラブ)に答えてのもの。
一方、現在、開かれている「こども病院移転計画調査委員会」で一部の委員に配布されなかったマル秘文書問題についての質問に高島宗一郎市長は「そもそも配布資料ではなく、委員会の構成、最短ケースでどういった論点が考えられるかなど、整理するために使っていた」と説明。資料の存在は知っていたが配布する指示は出していない内容を述べた。配布に至る経緯は、同委員会事務局の責任者である吉村市長室部長(こども病院移転計画検証担当)が「委員の就任のお願いあたって自らの判断で転用した」と述べた。質問を行なった中山郁美市議(共産党市議団)は、高島市長に一連の責任を求めると「しっかりと情報をオープンにして、これからも見える形で議論を行なっていく。そして透明性があるように進めていくことが私の責任と考えている」と述べた。
現在、訴訟に発展している現地建て替え費用の試算増額問題について、つる川洋副市長※が「費用に関しては更地に建設した場合の少なくとも1.5倍程度は見込むべきだ、という意見だった」としたが、ゼネコン3社から意見を聴取したとされるメモを残しておらず、記録が残っていない。また、担当者の記憶がはっきりしないため現時点で明確に示すことができない」と、記録が残っていない旨を繰り返し答弁した。
中山市議は、事実解明は極めて重要なものとしたうえで、条例予算特別委員会にゼネコン3社の関係者を参考人として招致して会期を延長してでも調査すること。あわせて当時の市長であり検証検討チームの作業を指示していた吉田宏氏、ならびに当時の担当課長をはじめ、チームのメンバーの招致を要求した。
委員会を紛糾させたこども病院移転計画について、高島市長は最後、「市長になる前の問題ではなぜそうなったのかと私も疑問に思ったひとりだ。このまま進めてはみんなが不幸になってしまうと思い、調査委員会を立ち上げた。これまで役所の内部だけで検証してきたということが今だに尾を引いている原因のひとつになっている。本当に検証するのであれば医療の専門家、市民の代表、患者家族の代表などいろんな人を入れて議論が見えるなかで最終的な判断をした方がいいと思い、一度PFIを止め、オープンにしていきながら自分で立ち上げた調査委員会の推移を見守って、そこが出す客観的かつ専門的な結論を踏まえ、最終的な判断をしたいと思う」と述べた。
※つる川副市長の「つる」は雨冠に隹と鳥。
【長井 大輔】
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