<万全な株主対策を打ったつもりが>
筆者は、「鐘川氏が臨時株主総会を開催するくらいなら、多数派工作は完了しているでしょうもん」と議論を進化させていった。「いやー、手堅く見ても、こちらは640万円の株を押さえている。990万円の資本金のうちの640万円だから、心配はいらん」と中野社長は自信満々だ(資料5:株主構成名簿。*が中野社長陣営と見られていた株主)。「この梶原・都築両氏は大丈夫ですかね」と確認した。「いや、間違いない。太鼓判を押す。この2人の資金は(株)四国テクノが出しているから」と中野社長は断言した(注:四国テクノとは、後述するO社の前身、(株)サンコー・テクノの子会社、中野氏とは深い関係にあった)。
最終的な詰めを怠らないために、3月2日、経営法律事務所を訪ねた。この事務所は、福岡でも珍しい『経営』を銘打っている弁護士事務所だ。改めて事の経過を整理するため、中野社長は今回の件について、資料を交えながら弁護士に説明した。同氏は「とりあえず解散決議を食い止める」つもりでいた。ひとまずの解散を阻止するためには、株主関係を把握しておくことが重要である。
中野氏と弁護士は、ともに株主名が書かれた文書を見ながら、「誰が味方か敵か」のチェック作業を行なった。途中途中で、弁護士によってたびたび、「この人は味方で間違いないですよね」と念押しされた。最終的には、「9日付での解散は阻止できる」という前提のもとに、弁護士側から「中野さん!!貴方の目的を明確にしましょうや」との提案がなされた。
議論のうえに立って、「こちらの主導権のもとで中野氏陣営側の株を買い取らせよう」という結論に至った。前述した通りに、「今さらO社の経営参画には未練はない」というのが中野氏の偽らざる心境であった。
【児玉 直、楢﨑 賢治】
COMPANY INFORMATION
(株)鐘川製作所
代 表:鐘川 喜久治
所在地:福岡県粕屋郡須恵町大字上須恵1495-1
設 立:1966年10月
資本金:4,000万円
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