民間における各方面(横浜青年会議所、まぐろ漁船など)からの協力により、福岡市中央区天神に集めた50トンの支援物資の輸送にメドをつけた会社経営の男性A氏。その一連の騒動のなかで、「善意」と言われるものの実態について深く考えさせられることが多々あった。
A氏は支援物資について、当初4トントラック1台分を想定していた。しかし、チェーンメールなどによって情報が広まり、予想量を大幅に超える支援物資が持ち寄られた。その結果、受け入れを拒否せざるを得なくなり、持ち寄った市民との間で混乱が生じた。
A氏の会社および関係企業・団体に対してのクレームの電話が、ひっきりなしに鳴った。ことの次第を知らなかった関係団体の事務所へ、車で乗りつけた市民が「代わりに受け取れ!」と、強く迫ったこともあった。
受け取れなかったことに対する自分への不甲斐なさも感じていたのか、A氏は「預かったものは責任をもって届ける」と決意し、徹夜の仕分け作業を始めた。NGOを始めとするボランティアも続々と集まり、作業に協力した。支援物資を仕分けする理由は、品目ごとに仕分けしておかないと、現地の配給に混乱が生じるからである。
また、仕分けに携わったボランティアによると、ひと目で使用中であることが分かる歯ブラシ、洗濯されていない衣服、食べかけの菓子など、使用に耐えないものが含まれていることが少なくはなかったという。
災害派遣の経験がある元陸上自衛官によると、寄付される支援物資にそうした物品が含まれていることは珍しくないという。人口の多い自治体が、支援物資について事前申告または物品の指定を行なっているのは、そうした実情もあるからだ。
A氏の行動は、彼自身も反省しているが、計画自体がずさんで「軽率」とのそしりは免れられない。しかしながら、持ち寄った支援物資が受け取られなかったことに対する怒りや不満は、何を理由とするものなのか。受付で、持ち寄ってきたラジカセが受け取ってもらえないことを知り、憤慨してそのラジカセを地面に叩きつけた男性もいたという。その時、受け取られなかったとしても、輸送の機会は必ずやってくるはずだ。今は「本当の支援とは何か」を日本人一人ひとりが冷静に考え、一丸となって復興へ向かわなければならない。
【山下 康太】
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