<大手取引先が大口工事発注確約で計画遂行>
今年1月、こんなよだれの出る話がO社((株)オーシャンテックワールド)に舞い込んできた。水産会社の大手・マルハニチロはもともと得意先であった。この会社の担当者が持ち込んできた、マグロ養殖場の設備計画の話である。専門用語で言えば、「投餌機(餌を投げ入れるプラント)」制作の仕事が、この先3年間、コンスタントにO社へ投げられるというものだ。取引総額は2億円超えるとか。年商2.5億円のO社から見れば、優良企業から今後3年間で2億円の仕事がもらえるとは、「よだれが出る」という表現は決して大げさではなかろう。
邦次朗氏は、動きを開始した。シナリオは、(1)「O社を自由気ままに経営できる体制でいく」、(2)「K社((株)鐘川製作所)の水産機械事業として、O社を吸収していく」の2案である。(1)案を実行するためには、まず「目障りな株主=電子商事・中野社長グループ」を放逐することだ。ただしネックとしては、O社が存続している状態では、中野一派の駆除の達成は容易でないこと。こじれてしまえば、世間体が悪い。「やはり、O社の経営危機を煽って会社清算で迫れば、目障り組を沈黙できる」という分析をして、(表面上は)(2)案を採用したようだ。
そのため、まずは経営状況の悪化の話を意図的に広め始めた。3月1日には、ある材料仕入先に対して『昨年秋より資金繰りが逼迫している』、『先月末(2月末)に支払う予定だった代金は待ってもらいたい』、『打開策は9日に開催する臨時株主総会で話し合う』という旨の書面(資料6:支払猶予の依頼状)が送られている。自ら信用不安を煽りつつ、邦次朗氏は抜け目がない。「最終的には支払いの件は、鐘川製作所で面倒をみる」と安心させている。まったく抜け目がない。
「会社清算」をもくろみつつ、厄介者はパージしていく。山本専務は自立心に富んだ人材だ。中野氏とも親しい、結託している。「この際、詰め腹策で追いだそう」作戦を展開した。山本氏もあまりO社に執着がなかった。意外とあっさりと身を引いた。本人の本心は、「15名の従業員は、S社((株)サンコー・テクノ)の時代からの仲間たちだった。だから、資金繰りの苦労にも耐えてきたのだが、人の苦労を知ろうともしない。許せないのは、2年足らずで邦次朗社長に誑(そその)かされてしまったことだ」。さすがだ。去る者に「邦次朗社長が末次取締役を筆頭に従業員全員を丸めこんでいる」ことを認知させるとは、なかなかの策士でもある。
【児玉 直、楢﨑 賢治】
COMPANY INFORMATION
(株)鐘川製作所
代 表:鐘川 喜久治
所在地:福岡県粕屋郡須恵町大字上須恵1495-1
設 立:1966年10月
資本金:4,000万円
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