18日(金)の夕方、銀座を歩いた。通常であれば、18時ともなれば『ハナ金』で華やぐなかに雑踏の雰囲気を醸し出すのが、銀座の魅力なのである。ところが、だ。三越銀座店前の人通りは3割しかいない。寂寥感が漂っている。また、ネオン・照明の節約ムードで、往来が暗い。さらに、各飲食店が看板照明を一段暗くしているので、通りの雰囲気が違っており、知り合いの店を通り過ぎてしまった。
18時半に、九州の食材を売りにしている高級居酒屋の暖簾を4名で潜った。この時間はいつも満席なのだが、男女のカップルと女性単独のお客の3名しかいなかった。マスターの「いらっしゃい」という威勢の良い声が聞こえない。「大将!!激励に4名で来たよ」とこちらが気を使ったのだが、マスターの顔が暗い。注文を聞きに来た女性スタッフに、それとなく状況の探りを入れた。「今週はお客が少ないから、9時で店を閉めています」という証言を得た。
4名とは、新聞記者と都市プランナー、弊社東京支店の社員、そして筆者の4名である。
新聞記者は、被害状況を即効報道できない無力さを嘆いていた。言われてみたらそうだ。12日のどの朝刊を読んでも、「一体、どれだけの被害状況なのかさっぱりわからない。外国の話ではないぞ。この日本の東北地方の地震の動向を知りたいのだ!!半日も過ぎて肝心の実体を何一つ伝えていない!!」と怒りを感じたのは筆者一人ではなかろう。新聞、TVなどの既存メディアは、緊急事態にはまさしく鈍い動きしかできないことを露呈してしまった。
都市プランナーは、「効率だけを求めた東京の過密都市の破綻が、近々やってくる」と断言した。「大正に起こった関東大震災規模の地震が発生すれば、100万人の人が亡くなる。被害総額は軽く100兆円超える。11日14時台に起こった今回の東日本大震災と同様の時間帯に、東京が襲われたらどうなる。地下には20万人(地下鉄含む)の人がいる。これらの人たちは、恐らく犠牲者になるだろう。あまりにも東京を一極集中型の都市にしてしまった。10年のうちに、必ず罰を受けるだろう」。
結局この晩も、我々が夜9時過ぎにお開きにしたら、店をクローズしたようだ。
ホテルまでの往来は、まさしく『銀座の火が消えた』という表現が的確であった。「銀座の勢いが回復するのは、5月のゴールデンウィ―クを過ぎるな」と直感した。
宿泊したホテルで、ホテルマンから耳にした。「20、21日は連休だったので18日から20日までの宿泊予約は満席でした。ですから、数多くの予約をお断りしていました。ところが、今回の地震の襲来です。今度はお客様側からの予約のキャンセルが相次ぎ、今夜は60%、明日は50%の泊り客になりました」と、肩を落としている。
驚いた情報を一つ。外人客主体の高級ホテルのケースだ。日本の本部機能を大阪に移した。その影響で、長期滞在していた外人客は大阪へシフトしたのである。宿泊率が30%になった。この残ったお客を同業他社に紹介して、ホテルは3月いっぱいの休業を決めた。休業の理由は、「日本国内の物流が混乱している影響で、お客様に満足いただく食材を提供できないため」である。外資の変わり身の早さには、ただただ呆れるばかりである。
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら