4月10日に投開票が行なわれる統一地方選挙の前半戦は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震について各陣営がその影響を計りかねている状況のなかで行なわれる。今なお終息のメドがつかない福島第一原発の問題も含めれば、わが国始まって以来の未曾有の災害である。政治的にも「想定外」だった。
そのようななか、さまざまな所で目にする『自粛』について疑問の声があがっている(関連リンク参照)。必ずといっていいほど『自粛』に伴われるキーワードは「不謹慎」。紆余曲折あって、プロ野球は両リーグともに開幕を延期したが、そもそもプロ野球は「不謹慎」なものだったのか。同じ野球でも、春の選抜高校野球は実施され、被災地を含む高校球児たちの熱戦が、見る者に元気を与えている。
今回の統一地方選においても『自粛』が目立っている。告示以降は、『自粛』として朝夕の各2時間、選挙カーの使用を制限すると政党間で申し合わせ、無所属の候補予定者にも協力要請の文書が配布された。選挙カーによる街宣活動、連呼行為などが「不謹慎」と言われれば、これはそうかもしれない。
しかしながら、この『自粛』は、統一地方選そのものが延期となった東日本大震災の被災者とはまったく関係がなく、むしろ選挙区の住民に対してのものといえる。そして、今まで「不謹慎」だとわかっていて実行した"確信犯"であることを白状したようなものだ。
『自粛』は、選挙カーに限ったことではないようだ。無所属の新人候補予定者が、街頭で政治活動(演説)を行なっている際、他の陣営が、震災被災者のための募金活動を隣接して始めた。新人に対し、こんなときに街頭演説は「不謹慎」だというのである。ちなみに、その新人は別途、募金活動を行なっていた。
なお、義援金の募金活動に力を入れる民主党は、募金活動用グッズとしてのぼり、ポスターなどを作成し、全国に配ったが、地方からは「その費用を義援金に回すべきでは?」という疑問の声もあがっている。
今回の選挙における『自粛』への疑問は、すでに何度か報じてきた。残念ながら、立候補者が有権者の顔色をうかがっている現状では、まず有権者の意識が変わらなければならないだろう。各業界で今後の経済的影響に対する不安の声が日増しに大きくなるなか、東日本大震災は、わが国全体の問題であることは論じるまでもない。いまだ「対岸の火事」と思わされている有権者が目覚め、決して「不謹慎」ではない選挙活動をしっかりと行なわせるムードを作りあげることが必要だ。
【山下 康太】
▼関連リンク
・「選挙自粛に一言」(調査報道サイト「HUNTER」より)
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