<東日本大震災に直面しても運ある人たち>
3月30日の1日のうちで、6名の経営者と会い取材した。TELを通じて話したビジネス関係者は15名。大半の人たちは「これから大変だ、大変だ」と異口同音に嘆く。昼過ぎ、合板・コンパネ商社の社長からTELがかかってきた。「いやー驚いたよ。竹中工務店本社の購買部担当者から突然、『御社には在庫がありますか。ぜひ、注文したいのですが』と問い合わせがあった。『いくらでも応対しますよ』と答えた。合板の船便を東京、東北の港に入港させよう。今回、震災用で得た利益はすべて義援金にまわす」。
この夜、技術ベンチャーの経営者と会食した。彼の会社は、汚泥処理プラントの技術では他社の追随を許さない。「地震の11日の際にはわが社の社員たちは八戸の港にいた。『ヤバい』と察知して船で外洋に出たので難を逃れた。この恩返しに生コンプラントを2機寄贈しようと思っている。いまから復興作業が本格化すれば、生コンの重要は膨大になる。そのための貢献の一翼になれば良い」。3月30日の1日で巡り合ったなかで、悠然と構える2人の経営者に遭遇したのである。
<2回上場させた勝ち組の典型・南部恵治氏>
南部氏には、3月6日にお会いさせていただいた。1949年生まれの61歳。10歳若く見える本人は、取材を通じて「非常に頭の低い人である」という印象を得た。99年6月、パソナソフトバンク(現・フジスタッフ)をジャスダック市場に上場させた。続いて03年9月、福利厚生事業で急成長していたベネフィット・ワンを再びジャスダック市場に上場させたのである。業界では『卓越した運力を持った男』という高い評価が定着している。
南部氏は体験に基づいて語る。「運気という見えないパワーが人の未来を握っていて、それを自由に使いこなすことができる領域に入ったとき、その人は成功者になれると思うのです。いわゆる『先見の明』と呼ばれるような直感力でなく、直感的に未来を読む力があって、それを自分にとってプラスの方に向ける力強さがあれば、必ず成功するはずです」。まずは凡人には理解不能だ。この境地、または入り口での体験の走りがあれば理解、納得はできる。
<ソフトバンク・孫氏は超強運の持ち主>
南部氏は「勝ち組になりたいなら強運の持ち主と付き合うことだ」と助言する。同氏が「強運No.1」と称賛するのはソフトバンクの孫氏だ。孫氏の打つ手打つ手がすべて当たったわけではない。ここ一番で大金山を掘り当てる。アメリカのヤフーとの出会いがその大金山。人材面でも、野村証券の逸材と言われていた北尾氏との邂逅(かいこう)で組織レベルが飛躍的な発展をなした。
加えること、南部氏が冒頭に指摘していた孫氏は「直感的に未来を読む力」を兼ね備えている。時代を読み、ビジネスを組み立てていく馬力には頭が下がる。まったくブレずに一直線に突進していく。孫氏は幾多の事業の取捨選択を繰り返してきたが、最後には通信回線事業という古典的実業を握った(現代は携帯電話という形態になっているが―)。孫氏は4、5兆円規模の事業規模の経営者になる可能性を秘めている。
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