「議会基本条例」とは、地方議会の運営ルールを条例で定めて明確に示したもので、地方議会の最高規範ともいえる条例です。議会と議員の活動原則や市民参加を推進することなどを明文化しており、議会での議論を活発にし、開かれた議会づくりを推進するとともに、市民の意見を集約し、真に市民の負託に応える議会の実現を目指すものです。2006年に北海道栗山町が全国で初めて制定しました。
その内容で重要なものは、まずは「情報公開」です。
議会の本会議は、原則「公開」すると地方自治法に定められており、市民の皆さんが容易に傍聴できますが、福岡市議会を含めて多くの議会では、常任委員会、特別委員会、議会運営委員会などについては、市民の傍聴を認めるかどうかを「委員長の許可」に委ねています。まったくおかしな運営の仕方であると言わざるを得ません。
「徹底した情報公開」を、市長をトップとする行政側に迫り、自ら手本を示すべき存在である議会が、このような運営をしていてはどうにもなりません。
全国の自治体で制定されている多くの議会基本条例においては、委員会の傍聴を原則自由とし、議会に対して請願・陳情をした市民に意見を述べる機会を与えるなど、市民に開かれた運営ができる規定を設けています。
次に重要な内容は、「議員間の自由討議」です。
これまでの地方議会では、本会議や委員会での議論は、市長をトップとする行政側と議員とがやり取りするのみで、議員同士が侃々諤々(かんかんがくがく)と議論する機会がほとんどありませんでした。福岡市議会は、議員提案条例の数が政令市でトップであることから、議員同士の議論が行なわれた実績がありますが、それでも、市長が提案する議案に対しては、議員同士の討議はほとんどなされてきませんでした。私は、選挙で選ばれた議員同士がしっかりと議論し合うことが代表民主政にとって不可欠であると思っています。
そして次に、「議会報告会の実施」が重要です。
「議会報告会」は、議会の定例会などの閉会後に、その議会で決議された議案の内容や、その議案に対する議論の過程などを、議員個人としてではなく、議会が機関として、地域に出向いて市民に報告する制度です。市民と議会の距離を縮めるとともに、議員としては、議案となったテーマに関して自己の支援者だけではなく多様な市民の意見を直接聞く機会になります。また、市民にとっても、議会・議員に直に接する機会となり、市政への関心も高まっていくという相乗作用が期待できます。
私は、福岡市議会においても、このような「議会基本条例」を早急に制定する必要があると考えています。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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