ハイテク電気・電子部品の、アジア向け営業を担当し、98年以降、10年以上に渡って、中国の市場を見続けてきたNECソフトウェア九州の幸田好和社長がIT業界における中国市場の可能性を語った。
<SEの世界でも急成長する中国>
NEC本体にいた98年、アジアを担当することになり、台湾にわたり、翌年、香港、シンセンに異動した。そのころはまだ、人民服を着た人たちがたくさんいて、今風の服装というのは見かけなかった。システムエンジニアの世界は当時、北京が中心で、3~4年後には上海に移っていくだろうという時期。上海ではすでに部品の集約が始まっていて、大連には三菱電機、サンヨー、天津にはアルプス電子など、日本の大手ハイテク部品メーカーが工場を建設していた。そのため、わたしは中国国内で、ビジネス領域を広げようと、営業に駆け回っていた時期だった。NECソフトウェア九州の社長になり、地元・福岡へ3年前に戻ってきたが、これまでに中国出張は延べ70回を超えているだろうか。その時期から考えると、たった10年ちょっとで、中国は大きく成長したものだと感じる。
中国はこれまで、ただ単に安いものを作る国という印象だったが、今はもう違う。安い生産国だけでなく、最近はそれに加え、高付加価値のものも作れるようになってきた。設備も整い、日本からの人材も揃ってきている。工作機械メーカーも金型メーカーもすべて中国に存在する。今や中国で作った金型が日本に来ている状況だ。あらゆる産業が中国に行っている。この業界でも、すさまじい勢いの成長を感じている。
6年ほど前、南京で、インドのIT企業が中国に拠点を作ろうと2000人規模で来ていた。その半数は日本語も堪能だと言う。当時、NECは200人規模で、アジアのあらゆる国々の企業が、中国マーケットを視野に入れていることに驚愕した覚えがある。
そういう状況のなか、ITの分野では、日本に勝ち目があるのだろうかと考えたが、今でも日本が優位なのは「素材」だけではないか。コンマミクロンの超先端技術を駆使した材料とか、100トンの負荷をかけても壊れない金型素材とか、シルクなどの高級素材とか、それらの加工技術という分野においては、まだまだ日本が上かもしれない。品質のこだわりは日本人の文化だと思う。時間をかけないと成果が出ない分野、いわゆる「日本のお家芸」といわれる分野でしか勝ち目はないかもしれない。
【杉本 尚大】
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