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2011統一地方選挙

福岡県知事選、みんな終わったといっているが(中)~福岡県の利権を支配したがる中央官僚
2011統一地方選挙
2011年3月 1日 07:00

経済産業省 それにつけても今回の候補者選定の過程で特徴的なことは、中央官僚の積極的な関与であった。経済産業省は、麻生渡氏と同様な経歴を持つ小川洋氏の知事選出馬へ、事務次官を筆頭に省をあげてなりふり構わぬ介入を行なったのである。事務次官自ら九電の鎌田前会長や松尾会長に小川氏の推薦を依頼したという。もちろん経済産業省の自慢のOBである麻生渡知事にも根回しは依頼された。本当は五選を目指したかった麻生渡知事が、財界有力者や連合幹部に自らの後継者として小川洋氏を引き連れて挨拶回りをしたことは昨年秋から話題になった。九州・福岡の殿様・九州電力といっても経産省の意向は無視できない。

 なぜ、これほどに福岡県知事の座に経産省はこだわったのか。それは福岡県政を握ることの意味を彼らが熟知しているからである。アジアのゲートウェイとしての福岡とよく言われるが、それは地勢学的な意味で理解されがちだ。物流をはじめとする産業面における福岡県についての理解はイメージ的にしかなされていない。

 日本の中心産業である自動車産業の生産拠点としての福岡県は、愛知県に迫る力を持ち始めた。とくに苅田港から中国のトヨタ工場で生産されるプリウスの次世代エンジンの輸出は大きな伸びを示している。またシリコンアイランドと呼ばれる九州にあって、福岡県には半導体製造工場が多い。今後の日本を支える主力産業の根拠地として福岡県は成長してきているのだ。そこに県庁の出番がある。

 たとえば平成の大合併の際に、福岡県は苅田町の北九州市への合併を許さなかった。その見返りとしてトヨタ工場を苅田町に誘致したのである。トヨタ自動車には税制面で最大の優遇を条件とした。裏門司だろうが、若松だろうが、自動車運搬船が入港できる港湾設備があればどこでもよかったトヨタは、結局、県の希望を聞き入れて苅田町に工場を建設することに踏み切った。政令指定都市の北九州市にトヨタを取られたくないという福岡県の思惑と税制面での優遇措置を引き出そうとするトヨタの思惑が経済産業省の仲介で合致したのである。つまり経済産業省にとっては、福岡県の知事は自らの意思を尊重する人物でなければならなかったのである。

 このことは谷口博文候補を推した財務省にもいえる。最近、経産省の勢いに迫られているとはいえ、日本の官庁で最も力を持つ財務省が福岡県の権益を無視するわけはない。小川陣営と蔵内陣営の対立が深刻化しているとの分析のもと、一挙に谷口候補を推し立てて候補者選定場面に介入したのである。このときも財務省トップが直接福岡県の企業に働きかけたといわれている。いまや横浜銀行を追い抜き地銀トップの実力を誇る福岡銀行や西日本シティ銀行、さらに前述したように日本を牽引する各企業が立地する福岡県の首長を抑えることは、財務省にとっても大きな課題であった。

 だが、これらの中央官庁の争いに福岡県政が振り回されるのはいかがなものか。問題は県民の生活にある。中央とのつながりが県に利益をもたらすという経済構造はすでに失われている。トヨタ工場建設にしても、元請け大成建設は利益をあげたものの、安価な建築費で厳格な期日指定を守らなければならなかった下請け・孫請け企業は赤字に泣いた。また清掃など付随業務においても、トヨタ方式に慣れた業者が愛知県から参入し、地元にはほとんど金を落とすことはなかった。

 なにはともあれ、今回の知事候補者擁立過程における経済産業省と財務省の対立は、今後福岡県に微妙な陰を落とすかもしれない。

(つづく)

【勢野  進】

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