いずれにせよ、これだけ世界中で原子力発電所の建設計画が進むと、燃料源としてのウランの需要は高まる一方である。現在、世界の原子力発電所で使用されているウランの量は6万9,000トンといわれる。ところが、世界のウラン鉱山から採掘されるウランの量は年間5万1,000トンである。燃料となるウランの供給量が限られているため、世界各国の原子力発電所は平均すると50%近くの稼働率でしかない。なかには稼働を停止している原子炉も多い。
アメリカの原子力発電所が活用しているウランは、1987年にロシアとの間で核軍縮協定を結んだ結果、2万発の旧ソ連製核弾頭がアメリカに払い下げられることになり、そこから回収されたものである。ところが、この協定で提供されることになったロシア製の核弾頭からの供給はすでに終わりを迎えようとしている。そうなると、アメリカにとっては肝心のウランの供給体制に支障が生じることとなる。
こうした状況を見越してか、2008年の時点と比べると、ウランの価格はすでに1,625%も上昇を遂げている。ウランの鉱山を所有しているのは、主に世界の3大資源採掘会社のカメコ、リオティント、BHPビリトンである。これら独占企業にとっては笑いが止まらない状態であろうが、これだけ急激な値上がりが続くとなれば、日本にとっては早晩対応が難しくなるはずであった。
実際、こうした高値のウランを購入する最大のお得意様は世界1の外貨保有国となった中国に他ならない。日本とすれば、いずれにせよ脱・原子力の方向性を真剣に模索すべき時期にさしかかっていたのである。
さらに、この際、日本として早急に取り組むべきは東西の電気周波数の統一である。日本では東日本と西日本で電気の周波数が異なっている。これは100年以上続いている日本における電力行政の欠点のひとつであろう。東日本では、ドイツの発電システムを採用した影響で50Hz。一方、アメリカのGEの発電システムを採用した西日本では60Hzとなっている。広大なアメリカでも電気の周波数は全国で統一されているが、狭い国土の日本でありながら、東西で周波数が違うという奇妙な状況が続いている。
この周波数を変換する発電施設も建設されているが、そこで対応できるのは1ギガワットまでである。今回の福島原発の事故によって、東日本地域にある11の原子炉は閉鎖を余儀なくされた。その結果、関東全域で計画停電という非常事態になってしまった。もし日本国内で統一した周波数が導入されていれば、今回のような事態に対しても、西日本から電力供給がスムーズに行なわれたに違いない。その意味でも、東西の電力システムを統一することが今後の課題といえよう。
【浜田 和幸】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。
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