3月3日にグランドオープンした、JR博多シティ。オープンから3週間あまりが過ぎたが、この新博多駅を「駅」として見た場合、その魅力はどうだろうか。
かつてJR博多駅のデザインにも携わったことのある建築家A氏は、今回リニューアルされた新博多駅について次のように評す。
「今回リニューアルされた新博多駅は、ある程度まとまってはいるものの、あまり面白みが感じられません。たしかに、博多阪急などを始めとしたデパートなどについては、それなりの魅力はあるでしょう。しかし、それはあくまでデパートの魅力です。駅自体は、単に電車に乗ってきて降りて次に行く、というような中継点、通過点になってしまい、あまり記憶に残りません」。
たしかに、今回の新駅リニューアルでよく話題にのぼるのは、「博多阪急」や「東急ハンズ」、「T・ジョイ博多」などの、いわゆる「テナント」について。肝心の駅自体についての話を聞くことは、あまりない。
「駅というものは、たとえばヨーロッパの古い駅やニューヨークのグランドセントラルのように、それだけでもある種の魅力を持つものです。今回の博多駅は、たとえばそこが映画の舞台になったり、そこでロマンスが生まれたりするような魅力に溢れているようには、あまり感じられません。
たとえば今回新しく整備された駅前広場などについても、ケヤキなどが植えられて一見きれいにまとめられてはいますが、どことなく無機質で冷たい印象を受けます。環境的な面からも、『未来都市・ふくおか』の玄関口として、少々寂しい印象です。
今回、博多駅をリニューアルするにあたって、本当は2つの大きなチャンスがあったように思います。1つは、『今』を生きる人々の思いを受け取り、歴史を紡いでいくための『記憶づくり』の役割を与えること。もう1つは、これから先の『未来』に想いを馳せられる、『夢を感じられる』場所としての役割を与えることです。この2つの要素が、新博多駅には薄い気がします。
駅というものは、都市にとって大事な要素です。今回の新博多駅はあまりに商業寄りになってしまい、未来を感じさせてくれるような『良い意味での無駄』や『物語性』がないように思います」(A氏)。
3日のグランドオープンに続き、同12日には念願の九州新幹線全線開業で、新たなスタートを切ったばかりの新博多駅。A氏が指摘するように、現状、本来の姿である駅としての魅力は薄いように思われるのだが、はたしてこれから先、どれだけ魅力を高めていけるのか。今はまだ発揮できていない新たな魅力を創出しながら、福岡・博多の活性化の起爆剤となってくれることを期待したい。
【坂田 憲治】
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