<富裕層を仲間にすればモノが売れる!?>
わたしは、中国の富裕層の人たちがどういう人たちなのかを研究したくて、2009年から1年間、上海交通大学に通った。この大学には、ビジネススクールのようなものがあり、若手経営者たち約30人とともに、さまざまなことを学んだ。彼らのなかには急に金持ちになった人も多く、ハクをつけるために来ている人も多い。面白いことに、授業のカリキュラムのひとつにマナー講座というものもあった。上海万博でマナーを教えていた人が講師になり、金持ちがどういう振る舞いをすればいいのか、どういう服装をしたらいいのかなどを教えるのだ。その授業では、マナーは欧米に、サービスは日本に学べと教えられていた。
上海交通大学だけでなく、中国国内のさまざまな大学がビジネスネットワークづくりの場を提供している。中国では、友だちづくりが最上の美徳と言われていて、大学を金持ち同士の人脈作りの場に生かそうとしている。言い換えれば、こういう場に参加することで、ビジネスチャンスになる。中国では口コミは重要で、物を売るためにはネットワーク作りは欠かせない。社会的に影響力のある人、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる人が買うものは、よく売れるという傾向があるのだ。
2010年、博多港に中国からのクルーズ船が約60回来た。わたしもボランティア通訳で4回ほど関わった。その際、福岡市内の店の人たちから、クルーズ船の客はなかなか物を買ってくれないという話を聞いた。わたしはそんなことはないと思っていた。現に、わたしはボランティアをしながら、12万円のベルトと1万円のイヤリングを4つ売った。わたしが思うに、日本人は商売っ気が足りない気がする。百貨店の接客を見ていてもそうだ。もっと攻撃的に「これがいいから買うべきだ」と、自信を持って商品を勧めるべきだ。クルーズ船の客はわりと田舎の人が多いので、ひとりが買ったら、みんな買うのだ。だから、中国人相手の商売には、買わないといけない理由を説明する必要がある。説得力が必要なのだ。日本の企業はその部分が弱い気がする。中国人に物を売るためには、「あなたはこれを絶対に買うべきだ」と言ってあげよう。そうすれば、売れる可能性は格段に高くなるだろう。
【杉本 尚大】
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